負債の適正水準をどう考えるか?

3日連続で東京電力のケースを取り上げてみたいと思います。今回は、東京電力の有利子負債の水準について考えてみたいと思います。

東京電力の今回のエクイティによる資金調達の理由のひとつに「財務基盤の拡充をめざす」というのがありました。

これに対して、市場では「東京電力は高い格付けを有しており、社債を発行した方が低コストで調達できるはず」という声が多いようです。

実際のところ、当事者である東京電力は、現状の有利子負債の水準についてどのように考えているのでしょうか。実は、東京電力は、2020ビジョンで有利子負債の関して次のような目標を掲げています。

『事業拡大に伴い、リスク対応能力を高めることも重要と考えています。
2020年度までにD/Eレシオ1.5倍(現状の半分程度)を目安として、それに近づくよう資本を蓄積していきます。(東京電力グループ中長期成長宣言 2020ビジョンより)』

D/Eレシオとは、有利子負債を自己資本で割ったもので、言ってみれば、自己資本の何倍の有利子負債があるかを示したものです。財務の安定性を示す代表的な指標と言えます。

実際に、企業が有利子負債の適正水準を検討する場合、どうするのでしょうか。こんな時は、同業他社のベンチマーキングを行うのです。

ということで、主要な電力会社のD/Eレシオ、そして、これまた財務の安定性を表す代表的な指標である自己資本比率をみてみましょう。

電力会社ベンチマーク.jpgのサムネール画像のサムネール画像

これを見てみると、東京電力が同業他社と比較して頭ひとつ抜きん出て有利子負債の水準が高く、財務的な安定性に劣ることがわかります。
明らかに同業他社を意識した目標を設定したということもわかります。
こうなると東京電力の気持ちもわからないでもありません。

ただ、もう少し考えてみると、D/Eレシオを下げるには、二つの方法があることがわかります。当たり前ですが、分子のD(デット:有利子負債)を下げること、そして分母のE(エクイティ:自己資本)を増やすこと。

実はEを増やすには更に二つの方法があります。今回のように増資すること、それともうひとつは、本業で儲けて利益を出し、利益剰余金を増やすということです。

「増資することによって安易に、D/Eレシオを改善しちゃって、本当に東京電力は儲けるつもりがあるのか!」と考えた株主がいてもおかしくはないかも知れません。

動画配信開始