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「ファイナンスの哲学(堀内勉著)」を読む

この週末に「ファイナンスの哲学(堀内勉著)」を読了。著者の堀内勉氏は昨年まで森ビル取締役専務執行役員CFOをやられていた方です。

第一章では、「ファイナンスの教科書的理解」として、ファイナンスの3つのポイントを解説しています。ひとつめは、財務諸表の理解、二つ目は資金調達の種類と方法、三つ目は、投資と企業価値です。

第二章は、この本の骨格と言えるでしょう。「資本主義の本質的な理解のための10大概念」-おカネ(money)、信用(credit)、倫理(ethics)/信頼(trust)、利子(interest)、利益(profit)、価値(value)、市場(market)、成長(growth)/進歩(progress)、時間(time)、資本(capital)/資本主義(capitalism)-について、ひとつずつ、古今東西の文献を紐解きながら、ファイナンス理論の元になっている基本概念とは何か、またそれが、経済思想や我々人間の存在とどのようにつながっているのか、網羅的に説明されています。

そして、第三章の「新しい資本主義社会の可能性を求めて」にこそ、堀内氏がこの本で伝えたいことが書かれていると思います。堀内氏はこう言っています。「ファイナンスというのはあくまでも一つの壮大なフィクションであり、非常に役立つテクニックであるが、やはりそれはあくまでもテクニックでしかなく、それが全てではない」ということです。

堀内氏が伝えたいことは、次の文章に集約されているように思います。


重要なのは、ファイナンスがよって立つ資本主義のゲームというのは社会全体を包摂する唯一無二の原理ではないということを自覚して、ゲームにはあくまでクールに参加することである。そして、そのゲームの勝者たちに強く求められるのは、ゲームに勝つこと自体を究極の目標にすべきではないと自覚することである。

ゲームの先にある人間としての自覚と目標にこそ、ゲームを極める本当の意味があるのだということを理解することが何よりも重要である。そうした自覚なく、資本の無限運動に生身の人間が巻き込まれてしまうのであれば、その人はどこにもゴールのない無限ループの闇の彼方に放り込まれてしまう。

わかりやすく言えば、我々は切れ味の鋭い包丁の使い方を未だ知らない駆け出しの料理人のようなものである。折角手に入れた包丁を正しく使い、美味な料理を作れば、皆が幸せになれるのに、それで人を傷つけてはならないのである。(206ページ一部引用)


まさに「道具としてのファイナンス」の使い手である私たちが、そのファイナンスの本質的な理解を深め、更なる人間力を高めるためにも、10大概念に触れ、じっくりと考える機会を持つことはとても、大切なことだと感じました。

ファイナンスの「哲学」ですから、答えが書かれている本ではありません。引用されている文章については全て文献が明記されています。また、巻末の参考文献は私たちが更に理解を深めたいと思ったときの格好の材料になると思います。久しぶりの刺激を受けたファイナンス本です。

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