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気がつけば格付け先進国

2017/12/24付日経新聞によれば、格付投資情報センター(R&I)の格付けを取得した上場企業約450社を集計。シングルA格とダブルA格は計75%と過去最高の比率。10年間で10ポイント上昇したといいます。米S&Pグローバルの格付けでも80%を占めるとのことです。この高格付けの原因は、上場会社の大半が実質無借金会社であることにあります。

実際のところ、格付けは、特に高くする必要はありません。あまりに格付けを重視すると、かえってそれに関わるコストが高くつくからです。高い状態で維持するためには、債務償還能力が高いということを示す必要がありますから、手元に潤沢なキャッシュを置き、なおかつ株主資本比率を高くしておかなくてはなりません。株主資本の調達コストは、ふつう負債コストよりも高いため、結果的にWACCが高くなります。

格付けに関しては、20年以上前になりますが、かつてIBMのトレジャラーのジェフリー・サークス氏が発したコメントが象徴的です。ここに紹介しておきましょう。


「トリプルAは非常に安定的な産業のものだ。また、トリプルAを取るためには、250億ドル(2兆5000億円)の手元現金を持たなくてはならない。それだけの手元資金を持つコストと、トリプルAをもらうメリットは見合わない」

「現在は安全をみて少し多めの資金を手元に置いているが、それでも60億~80億ドル程度だ。200億ドルくらいあると何に使うんだ、株主に返すべきだ、という要求がでる」

「(最低限維持したい格付けについては)現在のシングルA。使っている資本のトータルコストは、株主資本よりもコストが安い負債を多く利用するトリプルBのときに一番低い状態になると思う。だが、トリプルBは買収や自社株買いなど、急でまとまった資金需要への対応力が極めて乏しい財政状態だ。シングルAなら負債もある程度利用できるし、買収などに柔軟な対応も可能だ」

(「自社株買い 米市場の視点」日経金融新聞 1996年8月20日)。


ちなみに、米主要企業はシングルA格以上の比率が4割前後だと言います。一方、日本企業は、財務強化を狙い投資より借金返済を急ぎ、今では格付け先進国です。そして、現在、上場企業の手元資金は約100兆円と空前の規模です。すでに返済すべき借金はなくなりつつあります。

今後の日本企業には、財務戦略はもちろんのこと、手元資金を何に使うかという成長戦略が求められるということです。

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