あなたが親友に1年間、100万円を貸すとしたら何パーセントの利率
をつけますか。親友だったら、とらないという方もいらっしゃるで
しょうが、ここでは5%としましょう。つまり、あなたは、1年後に
親友から105万円を受け取るということです。
それでは、よく知らない会社の同僚だったらどうでしょう。貸さな
いという選択肢もあるかとは思いますが、もし貸すとしたら、少な
くとも5%よりは高い利率を要求するはずです。ここではその利率
が10%だとしましょう。
このとき、あなたが100万円を貸す(=運用する)場合の期待収益
率は、親友の場合は5%、会社の同僚は10%と表現します。
お気づきのように、私たちはリスクの感じ方(=リスク認識)によ
って、期待する収益率を変えています。
つい先日、セミナー受講生からこんな質問がありました。
「リスク認識によって、期待収益率は高くなる。一方で、期待収益
率=割引率であり、割引率が高くなると将来のFCF(フリーキャッ
シュフロー)が小さくなる。その結果、理論株価が低くなることも
わかりました。
でも、投資家の企業の業績に対する期待が高まるのになぜ株価が下
がるのかがわかりません。」
この質問はなかなかいいポイントをついています。
ただ、期待収益率の「期待」とは、企業の将来業績に対する「期
待」ではありません。
期待収益率とは、投資家がその企業に期待すべき収益率。言い換え
れば、その企業に対するリスクの感じ方を反映した要求すべき収益
率であるということです。
ですから、私は期待収益率という表現よりも、要求収益率という表
現の方がわかりやすくていいと思っています。