人が他人欠点や失敗を指摘して責めることができるのは、その同じ欠点や失敗が
自分にもある場合に限られるということである。その同じものが自分にあるのでなければ、
他人のそれに気がつくことすら不可能のはずだからである。人は常に自分の目によって
他人を見ている。これは当たり前のことのようだが、この当たり前に気がつくと、世界は
一変するはずである。つまり、その他人がそうなのではなくて、その他人を見る自分の目が
そうなのだ。他人とは、すなわち自分なのだ。他人は自分の鏡なのだ。(池田晶子「私とは何か」)