TDK社長は、日経新聞の取材に対して「2012年3月期の売上高営業利益率を2ケ
タに引き上げたい」と述べ、採算改善を急ぐ方針を強調したとあります。これ
は、今期の売上高営業利益率が軒並み10%以上になりそうな他の部品大手に比
べ、TDKの採算性が見劣りしているのが理由のようです。
日経の記事には電子部品大手4社(日本電産、村田製作所、京セラ、TDK)の営
業利益率のグラフが掲載されていました。確かに営業利益率が1桁の7%という
のはTDKだけです。
こんなときは、PL(=損益計算書)からのアプローチだけでなく、BS(=貸借
対照表)からのアプローチで分析してみたくなります。つまり、営業利益率を
改善する他に、資産の効率性を高める余地がTDKにはないかをみてみるわけで
す。
ROA(=総資産利益率)の利益に営業利益をとれば、ROAは売上高営業利益率と
総資産回転率に分解できます。早速、電子部品大手4社のROAツリーをみてみま
しょう。こうしてみると日本電産のROAは14.0%と4社の中でダントツであるこ
とがわかります。日本電産は、収益性の高さに加えて、総資産回転率も高いの
です。総資産回転率が高いということは、少ない資産で高い売上高をあげてい
る。つまり、資産を効率よく活用しているということです。
一方で、TDKのROAは5.8%といまひとつです。それでは、TDKは総資産回転率ど
うでしょうか?日本電産には及ばないものの、村田製作所や京セラと比較すれ
ば、頑張っていることがわかります。ここまで分析してやっと、TDKは総資産
回転率の改善の余地は残されているものの、収益性の改善が優先課題であると
いうことが言えるわけです。
財務分析のアプローチは収益性(PLアプローチ)だけではないということを
忘れないでください。
