【基本的なプロジェクトファイナンスのストラクチャー】
プロジェクトカンパニー
当該事業を行うためだけに設立させる特別目的事業体(Special Purpose Company: SPC)のことで、プロジェクトファイナンスに関連するあらゆる契約、及び資金調達ストラクチャーの中心に位置するものです。国内外の複数の企業が出資して負担を分け合い、有限責任の法人格を有する事業会社を設立します。プロジェクトカンパニーは当該プロジェクトの実施に関して、後述するO&MオペレーターやEPCコントラクターとの間で契約を締結します。実際にプロジェクトを実施するのは、O&MオペレーターやEPCコントラクターであり、プロジェクトカンパニーは、プロジェクトに関する各種契約の当事者であり、実質的にはペーパーカンパニーです。
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プロジェクトカンパニーへ出資する親会社のことです。設立資金を出すだけでなく、様々な技術支援や人材派遣、あるいは劣後ローンのようなサポートをします。EPCコントラクター、O&Mオペレーター、ファンド、商社、金融機関、政府機関などがスポンサーになります。「オーナーオペレーターの原則」に基づき、O&Mオペレーターと基本的には同一の法人とすることが一般的です。もちろん、スポンサーの一部はプロジェクトの運営に関与しない場合があるものの、そのようなスポンサーがマジョリティを占めることはありません。
レンダー
プロジェクトカンパニーへの資金の貸し手のことです。ホスト国内外の民間金融機関、債券投資家、公的金融機関などがレンダーとなります。先述した通り、スポンサーがプロジェクトカンパニーに劣後ローンを貸し付けることがあることから、レンダーが優先ローンの提供者という意味でシニア・レンダーだと呼ばれることがあります。プロジェクトカンパニーの資金調達における借入金と出資金の比率(D/E比率)は、事業会社・スポンサーとの力関係やプロジェクトの性格によって決まります。
EPCコントラクター
プロジェクトカンパニーは事業に必要な施設・設備を建設するため、プロジェクトの設計(Engineering)、調達(Procurement)、建設(Construction)を一括して請け負う建設会社やエンジニアリング企業を雇うことになります。この企業のことをEPCコントラクターといいます。単に施設の建設だけを行うのではなく、プロジェクトを完工させる義務を負うことから、プロジェクト完工に必要な施設の設計、機器の調達も行います。多くの建設実績があり、技術水準も高く信用力のある企業を選ぶことが重要となります。
O&Mオペレーター
「O&M」とは、プロジェクトの運営(Operation)・維持管理(Maintenance)を意味します。つまり、プロジェクトの運営および維持管理を行う法人を意味します。スポンサー(の一部)が自ら事業会社と契約して創業・保守を行う場合、スポンサーとしての配当に加え、運営・維持管理を含めた運営を行うことの対価である業務委託料もプロジェクトカンパニーから得ることができ、これを目的に事業参加する企業も多数あります。
原料供給者
事業の実施に必要な原燃料や公益サービスの供給元は、民間企業だけでなく、ホスト国の政府機関や国営企業であることが一般的です。どんなインフラ事業でもユーティリティが不可欠であり、電力・ガス・上下水道に加え、運輸・通信といった「インフラ」がインフラ事業のために必要となります。
オフテイカー
プロジェクトカンパニーやモノや公共サービスの提供を受ける先のことです。途上国の電力事業の場合は国営電力公社がオフテイカーとなるのが一般的です。また、水道事業や運輸事業であれば、不特定多数の一般利用者や地方政府(自治体)などがオフテイカーとなります。
政府・公的機関
インフラ事業では、プロジェクトが所在するホスト国の中央政府・地方政府(自治体)・政府機関がいろいろな局面で関わってきます。プロジェクトを進めるために、当局から事業権(コンセッション)や免許、建設・創業や資金調達・外為取引に必要な許認可を取得する必要があります。それ以外にも、途上国では政府機関や国営企業が、スポンサー、原料提供者、オフテイカーなどになることも多いため、これらの公的機関に対するホスト国政府からの支援を確保する必要があります。