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奇跡の経済教室 第3回

今回も「目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】」の内容を取り上げます。どうして日本は20年以上もの間、デフレ対策が実行されなかったのでしょうか。もう一度、下図のデフレの具体的な政策を眺めてください。



需要アップのためには、積極的な財政支出、「大きな政府」が必要です。デフレで個人が節約を余儀なくされ、企業がリストラを行っている時に、政府だけ財政支出を拡大し、公務員の数を増やしていたら、どうでしょうか。国民は政府に怒りの矛先を向けるに違いありません。そして、供給ダウンのための規制強化、国有化、グローバル化の抑制なども私たちは時代に逆行する政策と受け取るでしょう。つまり、どの政策も私たちの直観に反することばかりです。デフレ対策がとられなかった理由のひとつは有権者の賛同が得られにくいということがあるのでしょう。

一企業の立場で言えば、生産性を高め、競争力を高めることはよいことです。ところがデフレ時においては、日本経済全体としてはよくないことになってしまう。前回も取り上げた「合成の誤謬」です。政府の優先順位としては、まずは、デフレ脱却を果たし、次に経済をインフレにする、その上で、企業の生産性向上、経済成長という順番で政策を実行すべきなのです。

デフレの時は、供給過剰です。あなたはこう思うかも知れません。「供給過剰ということは企業の数が多すぎること。だとしたら、むしろ、政府は企業間の競争を促進して、競争に負けた企業に退場してもらえばいい。企業の淘汰が進めば、供給過剰は解消され、デフレから脱却できる。」実は、私もそんな風に考えていました。

確かに企業が倒産すれば、供給力は減少するでしょう。ただし、企業が倒産すれば、「投資」も減ることになります。さらに失業者が増え、「消費」も減るでしょう。つまり、「供給」と同時に「需要(投資+消費)」も減らしてしまうことになるのです。

さらに、私たちが注意すべき点があります。それは、企業経営と国の経済運営とは違うということです。業績の悪い企業であれば、非効率な部門は売却し、人員削減を行うことも求められます。企業は無駄なぜい肉をそぎ落とし、筋肉質になれるかも知れません。

一方、国の場合はどうでしょう。企業の淘汰が進んで、経済全体として筋肉質になっているように思います。しかし、そこで働いていた従業員は国の経済の中から消えることはありません。失業者としてとどまり続けることになります。失業者とは働く能力があるのに働けない、いわば「遊休資産」です。したがって、「遊休資産」を抱えた経済は非効率な経済だということになります。ビジネスの感覚で国の経済運営を論じてはいけないということです。

次回は「貨幣」の本質に迫ります。

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