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KAM導入の意味合い

KAMとは「監査上の主要な検討事項」(KAM: Key Audit Matters)のこと。2018年7月の監査基準の改訂によって、監査報告書には、このKAMが記載されることになりました。ちなみにKAMはカムと発音します。

このKAMと同様の記載はすでに国際監査基準(ISA)を採用する国ではすでに適用されています。EUにおいては、2017年6月期の監査から、米国においても類似のCAM(Critical Audit Matters)の記載が2019年6月期の監査から、それぞれ段階的に適用されています。日本においては、2021年3月期の監査から適用されることになります。ただし、2020年3月期から早期適用することも可能です。

すでにKAMが導入されているEUでは、KAMの記載項目も企業によって様々です。例えば、次のような項目がKAMとして記載されています。のれん・固定資産の減損、M&Aによる会計処理、未上場企業投資(株式等)に係わる評価、滞留在庫の評価、専門的で複雑な会計上の見積もりなど、監査人が特に注意を払った事項です。また、監査人が実施した監査手続についても詳細に記載されています。したがって、会計上の見積もりの前提条件などが適切なのか判断可能となります。

KAM導入の効果は、投資家に対して、監査プロセスに関する情報が記載されることで監査の信頼性が向上することがあげられます。また、投資家の監査や財務諸表に対する理解が深まることによって経営者との対話が促進されることも考えられます。また、監査人や監査役等の間のコミュニケーションや監査人と経営者の間での議論によってコーポレート・ガバナンスが強化されることも期待できるかも知れません。

監査人が追加的な情報開示を促したにもかかわらず経営者が情報を開示しない場合には監査人の守秘義務が解除されるというのも大きな特徴です。業績が悪化傾向の英国のロールス・ロイスの監査報告書に「収益目標の達成を巡り経営陣が従業員にプレッシャーを強める可能性がある」という不正会計リスクを示唆するような一文が盛り込まれ話題になりました。

同様の仕組みが2019年から義務づけられる米国では「(現在の会計制度の枠組みができた)1940年代以来、監査報告書の最も意義のある変化」(KPMG)との声もあるようです。KAMの導入によって、監査報告書の情報の質が高まり、投資家と経営者のコミュニケーションが深まることによって、コーポレート・ガバナンス強化につながることを期待したいと思います。

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