セブン&アイ「スピードウェイ」買収完了

セブン&アイ・ホールディングス(以下セブン&アイ)は、米国のガソリンスタンド併設型コンビニチェーン「スピードウェイ」の2兆3000億円の買収を完了させました。「スピードウェイ」は3854店舗を有し、店舗数では全米3位のコンビニエンスストアチェーンです。米国セブンイレブンが9519店舗で第1位ですから、今回の買収後にはシェア8.5%の圧倒的な業界トップとなります。

買収額と純資産との差額にあたる「のれん」が120億ドル(約1兆3000億ドル)と買収金額の半分以上となることが話題にあがっています。セブン&アイは日本の会計基準を適用していることから、「のれん」は減価償却の対象で、20年以内に費用計上する必要があります。これが毎年約650億円と買収による増益効果の半分の規模となるのです。

このブログの読者には自明かもしれませんが、これは、あくまでも利益にあたる影響であってキャッシュフローの観点では「のれん」の償却額が費用計上されたとしても現金で出ていくわけではありません。ただ、この買収に伴って有利子負債が1兆円から3兆3000億円に膨らむのは確かです。セブン&アイの井阪隆一社長は「買収の相乗効果で創出するキャッシュフローを当面は有利子負債の返済にあてる」と発言しています。

ここで2021年2月期のセブン&アイの業績をみてみましょう。売上高にあたる営業収益は5兆7667億円とコロナ禍の影響を受け、前期の6兆6443億円から△13.2%の減収となりました。また、営業利益も3663億円と前期の4242億円から△13.6%の減益です。営業利益率は6.4%と横ばいとなっています。

セグメント別にみると、営業収益に占める国内コンビニエンスストア(CVS)事業と海外CVS事業はそれぞれ16.0%と38.0%と半分以上を占めます。営業利益に占める国内CVSと海外CVS事業は、それぞれ63.9%と26.8%ですから、90%を超えるのです。好調なCVS事業の足を引っ張るのは西武・そごうなどの百貨店事業(営業利益▲62億円)と赤ちゃん本舗、ロフト、通販のニッセンに代表される専門店事業(営業利益▲135億円)です。


出所:セブン&アイHD「コーポレートアウトライン」

特に百貨店事業に関しては数年前から西武・そごうの売却先としてドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナル・ホールディングスの名前がまことしやかにささやかれています。これらの不採算事業を今後どうするのか。2021年7月に発表された中期経営計画では明言が避けられました。

一方、主力の国内CVS事業に関しても、国内コンビニ店舗の過剰感、人手不足、ドラッグストアなどの異業種との競争激化などを考えれば、安穏とはしていられません。持続的な成長に向けてスピードウェイを買収したセブン&アイの攻めの一手は十分に理解できるものです。脱炭素化が進む中でEVの台頭によりガソリン消費量は減少していくことが見込まれます。ガソリンスタンド併設型コンビニであるスピードウェイの業績はどうなるか。セブン&アイの今後の成長ドライバーである北米CVS事業の業績に注目です。

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