2019年1月6日付日経新聞によれば、英国で発足し、女性役員の比率3割を目指すキャンペーン「30%クラブ」が日本で今春にも始動。主要企業の取締役会議長や最高経営責任者(CEO)からメンバーを募って活動し、2030年までの達成を目指すといいます。
現状では、日本の主要企業100社の女性役員(取締役、監査役、執行役など)比率はわずか6.5%だといいますから、30%という目標がいかに高いかがわかります。
「女性に活躍の場を!」や「企業に多様な人材を!」などの掛け声とともにダイバーシティの取り組みを広げていこうという活動を決して否定するわけではありません。
ただ、ここで私たちが忘れてはならないことは女性役員3割といったダイバーシティの取り組みは手段であって目的ではないということです。それではダイバーシティの目的とは何でしょうか。経済産業省は「ダイバーシティ経営」を次のように定義しています。
多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮させる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、中長期的に企業価値を生み出し続ける経営
ちなみに、同省は「ダイバーシティ経営」を実践するための取るべきアクションを整理した「行動ガイドライン」を2018年6月に改訂しています。
つまり、ダイバーシティの目的は、中長期的に企業価値を生み出し続けるためであり、その前段階としてイノベーションを生み出すためと言えそうです。
問題なのはダイバーシティとイノベーションとの因果関係がはっきりしていないことです。百歩ゆずって多様な意見の交換や議論がイノベーションに結びつくとしましょう。ただ、いくら女性役員が3割いたとしても、その役員間で十分な議論や意見交換が出来なければ意味がなく、そこからイノベーションなど生まれようがないということになります。
また、いくら女性役員が3割になったとしても、「私は数字が苦手です。企業価値ってなんですか?」という女性ばかりでは困るわけです。
一方、このように「女性役員の比率3割」といった目標を設定しないと組織は変わらないのだという意見もあるでしょう。先述した「行動ガイドライン」の冒頭にはこうあります。
女性活躍も未だ道半ばであり、もはや「ダイバーシティは本当に必要なのか」という議論に時間を費やすのではなく、一刻も早く具体的な行動を起こし、実践フェーズへと移行すべきである。
本当に必要なのか分からないけれど、まずはやってみましょう!その先に何か見えてくるものがあるはずでしょうってことです。一見もっともらしく見えますが、ダイバーシティ目標達成のために思考停止になり、やみくもに行動し、いざ目標達成したものの、全く状況は変わらない。そんな光景が目に浮かびます。
このように、手段であるはずのもの(ダイバーシティ)がいつの間にか目的化(ダイバーシティ推進する)してしまうことはよくあることです。私たちはこのような落とし穴にはまらない様に常に心がける必要があるでしょう。