この週末の2日間は、会援隊主催のマネジメントゲーム(MG)に参加しました。
会援隊は、幕末に歴史を大きく前進させた海援隊の名と志を引き継ぎ、会計で日本を支援するために設立された公認会計士の有志の集まりです。隊長の相馬裕晃さんは、旧知の友人です。相馬さんの著書では、特に「なるほど、そうか! 儲かる経営の方程式 MQ会計×TOCで会社が劇的に変わる」がお薦めです。
さて、マネジメントゲームは、チ-ムで行なうのでなく、「一人経営」型をとり、材料購入・製造・販売・投資・資金調達・決算を全て一人で行います。
経営者として意思決定しながら、2日間で5期の会社経営をシミュレーションします。この経営シミュレーションゲームを通して、企業経営の大枠、利益の稼ぎ方、活きた経営戦略を身につけることができます。ソフトバンクグループの孫正義会長もこのMGについてこう発言しています。
孫語録1「マネジメントゲームMGは、人・物・金をどう配分するかのシミュレーション。悩んで、考え抜いて、そこでいろんな知恵がわいてくる」
孫語録2「赤字を出せ! 倒産させろ! それで学んでくれ! いくら倒産させても、実害ゼロだ!」
孫語録3「ゲームなら1日に10期分、10年分の経営だって体感できる。僕の後継者になる以上は、100期分くらいじゃ足らんよ!」
出典:小澤啓司「孫正義社長とソフトバンク社員が“ゲーム”に熱中する理由」PRESIDENT 2014年8月4日号(プレジデントオンライン 2016年10月17日公開)
私が初めてマネジメントゲームをやったのは、15年以上前です。そのときは、会社を倒産させました。ゲーム参加者は40人いましたが、倒産したのは、私一人だけ。事業経営は理屈ではできないことを痛感しました。
「企業価値向上のためには、経営者としては、こうすべきだ!」なんて、えらそうに言っていた私は全く経営というものがわかっていなかったのです。私は、刻一刻と変わる市場の変化に追いつけず、価格戦略にも失敗し、モノが売れない。手元のキャッシュが増えないことから、研究開発も広告宣伝もできない。
投資できなければ、価格競争力も販売力もつけることができません。その結果、さらにモノが売れない。こうして負のスパイラルに入っていったのでした。
私自身が、このMGをやることによって、機能ごとに物事をとらえていてはダメだと気づかされました。機能の一つであるファイナンスだけを学んでも経営することなどできるはずもないのです。
企業は人の集まりです。まさに有機体です。MGをやると、全ての機能が有機的につながっていることがわかります。また、経営にはバランスが大切だということが実感できる。さらに自分で決算を締めることにより、自分の意思決定の結果が数字にどう反映されるかがわかる。さらに、会社をよくするのも悪くするのも自分だということを痛感する。
まさにそれまで教科書で得た知識(他人の経験)が自分の体にインストールされ、知恵になっていく感覚でした。このMGは、経営のなんたるかを肌で感じることができるのです。
では、今回の私の経営成績はどうだったのでしょうか。
自己資本の推移(期首300)
1期:276 → 2期:260 → 3期:207 → 4期:218 → 5期:241
特に、3期では、取引先の倒産という不測の事態に見舞われ、一気に自己資本が毀損しました。これは現実の経営でも起こりうることで、与信管理の重要性や、万が一の事態に備えた手元資金の必要性を痛感させられました。机上で学ぶ知識とは全く違う、生々しいキャッシュフローの恐怖です。
このように、序盤の価格、投資判断の遅れが響き、倒産こそ免れたものの、期末での完全回復には至りませんでした。一方で、4期以降は作成した経営計画をベースに経営することで、改善基調を作れたのがまだ救いでした。それにしても、5年ぶりのMGとはいえ、累積でいえば、80期くらいを経験している者としては、恥ずかしすぎる成績です。
このMGでの意思決定の一つ一つが、決算書という一枚の紙に数字として現れるのが理解できます。その数字の裏側にある経営の物語を読み解く力こそが、現代のビジネスパーソンにとって不可欠なスキルだと改めて確信しました。
次回の会援隊主催のマネジメントゲームは、2025年12月13日(土)、14日(日)に開催予定です。詳細と参加申し込みフォームはこちらです。ぜひ、経営というものを体感してみてください。