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日本株大幅下落の裏で

トランプ前政権が発表した大規模な関税引き上げの余波を受け、日本市場は混乱に見舞われました。日経平均株価は2025年4月7日、過去3番目となる下落幅を記録。市場には世界的な景気後退への警戒感が広がっています。

そんな中、ある国の「例外扱い」が静かに注目を集めています。それは、ロシアです。

今回の関税政策では、米国は実に185カ国に対して関税の引き上げを実施しました。しかし、ロシア、ベラルーシ、キューバ、北朝鮮の4カ国はこのリストから除外されています。つまり、ロシアに対しては新たな関税が科されず、従来の貿易体制が維持されることになります。

ホワイトハウスの財務官は、FOXニュースのインタビューでこう説明しています。ロシアやベラルーシとは「実質的な貿易が存在しない」こと、そして両国はすでに国際的な制裁を受けているため、追加の関税措置は不要だ、というのです。

しかし、事実はやや異なります。

米国商務省の最新データによれば、2024年の米ロ貿易総額は約35億ドルに達し、米国の対ロシア貿易赤字は25億ドル。前年からは37.5%減とはいえ、依然として無視できない規模の取引が続いています。

さらに、イランやリビアのように、アメリカが制裁を科し、ロシアよりも対米輸入額が小さい国々が関税引き上げの対象になっている事実は、ホワイトハウスの説明と矛盾しています。

では、なぜロシアだけが“免除”されているのでしょうか。背景には、ウクライナ戦争の停戦交渉を優先させるという、極めて政治的な判断があると一部のメディアで、指摘されています。

しかし、関税免除によって停戦交渉がうまくいくとは限りません。実際、ウクライナ製品には関税が上乗せされる一方で、ロシアは免除されるという構図は、すでに「プーチンに足元を見られている」状況ともいえるのではないでしょうか。

米国はすでに多くの対露制裁を科しており、追加的な圧力手段には限界があります。さらに、ロシア経済は欧米の想定を裏切るかたちで持ちこたえており、「交渉に応じなければウクライナ支援を強化する」という圧力も、トランプ大統領とウクライナとの関係性を考慮すると現実的ではありません。

トランプ大統領といえば、「ディール(取引)の達人」として知られています。無理難題をふっかけ、徐々に譲歩しつつ、最終的に自分の望む結果に落とし込む。そんな交渉術は、政財界で語り草になってきました。

しかし今回のウクライナ問題では、従来の「強気のアメリカ・ファースト」とは対照的な姿勢が目立ちます。トランプ大統領は停戦交渉の出発点は、「現在の戦線での停戦(=ロシアによるドンバス支配の黙認)」と「ウクライナのNATO非加盟」です。これは、まさに「プーチンの要求そのもの」です。トランプ流のしたたかさは、ここには感じられません。

今回の関税政策ではロシアが“ご褒美”を手にする形となり、プーチン政権はむしろ、交渉を長引かせるインセンティブを得たとも言えるでしょう。ロシアへの“特別扱い”は、外交交渉における戦術ミスなのか。はたまた、トランプ大統領とプーチン大統領の間に何か密約があるのか。いずれにせよ、今後のトランプ政権の動きから、目が離せません。

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