三菱重工消えた4000億

三菱重工業が開発を進める国産初のジェット旅客機「MRJ」です。ところが、開発の遅れで5回、納入を延期し収益貢献のメドが立っていませんでした。遅かれ早かれ、減損損失を計上し、当期純利益がマイナスになってもおかしくはなかったのです。

減損損失とは、貸借対照表に計上している資産の簿価よりも評価額(その資産から得られるキャッシュフローの現在価値の合計)が小さくなると簿価を引き下げる会計ルールです。その引き下げた金額は損益計算書上で損失となります。

ところが、MRJの関連資産約4000億円が損失を計上することなしにバランスシートから消えることになったのです。これについて三菱重工は、決算説明会で以下のように説明しています。


・当社では2018年度(2019年3月期)から、従来の日本会計基準に代わり、IFRS(国際財務報告基準)を適用する

・航空機事業は長期での投資回収が前提。IFRSではそのリスクが保守的に評価されるため、これまで計上していたMRJ関連資産約4,000億円を、すべて圧縮する



出典:三菱重工 決算説明会資料

単なる会計ルールの変更に伴うものと理解できます。ただ、気になるのは今回の処理についての経営層のコメントです。

日経新聞によれば、5月8日に開かれた決算会見で、三菱重工の宮永社長はこんな説明をしたといいます。

「将来の財務的なリスクが、きれいに消えた」

何を根拠にこのような発言が出てくるのでしょうか。将来の減損リスクがなくなったということでしょうか。全くもってしてPL(損益計算書)へのインパクトしか考えていません。大切なことは、これからMRJにどれだけのキャッシュアウトが必要なのか、どれだけのキャッシュインが見込めるのかです。将来の財務的なリスクが消えたわけでは決してないのです。三菱重工の社長の発言としてはあまりにもお粗末です。

さすがに、CFOの小口氏はキャッシュフローにも言及はしています。

「MRJに投入する資金は、すべて自己資金すなわちフリーキャッシュフローでカバーしています。キャッシュフロー、バランスシートの両面で、MRJについてはいったん整理されたものと捉えています」

ただし、「自己資金すなわちフリーキャッシュフロー」でカバーしているから問題ないとも受け取れる発言です。フリーキャッシュフローは三菱重工のキャッシュではありません。債権者と株主に帰属するキャッシュであって、それをMRJに注ぎ続ける根拠が資金提供者である債権者と株主にとっては重要なわけです。

かつて、「三菱重、アレバ追加出資 総額700億円に」と題するブログで、サンクコストにとらわれている同社関係者の話を取り上げました。このブログを次のように締めくくったのですが、同じ想いです。


三菱重工は客船事業の大型損失や、納期が大幅に遅れている国産ジェット旅客機「MRJ」を抱えています。これらの事業を継続しているのは、同社がサンクコストにとらわれてのことでないことを願ってやみません。


 

動画配信開始