上場子会社が危ない

最近、日本の親子上場制度に注目が集まっています。というのも、ここに来て世間を騒がせるような出来事が立て続けに起こっているからです。大株主の伊藤忠商事がデサントに対して敵対的TOB(株式公開買い付け)を実施したことは記憶に新しいかと思います。伊藤忠商事は株式保有率を40%に引き上げて創業家社長を退任に追い込みました。

また、最近ではアスクルに対して、株式保有比率42%のヤフーなどが株主総会の社長再任案に反対し、解任しました。さらに社長だけでなく、独立社外取締役全員も不再任となったことは驚くべきことです。

独立社外取締役の再任には、合わせて約60%の議決権を持つ筆頭株主のヤフーと第2位株主のプラスが反対しました。ところが、2社を除く一般株主からは9割以上の賛成を得ていたといいます(2019年8月5日付日経新聞)。

これにこそ、上場子会社の問題が表出しています。上場子会社問題の本質は、親会社(支配株主)と上場子会社側の「一般株主」、特に少数株主との間に利益相反リスクがあるということです。

たとえば、上場子会社が生産する製品を親会社に市場価格より著しく安く納入する取引などがあるでしょう。また、親会社と上場子会社で競合するような事業領域がある場合は親会社に有利になるよう、有形無形の圧力が親会社から上場子会社にかかる可能性もあります。

こうした上場子会社は日本特有のものです。もちろん、海外にも上場子会社はありますが、市場に占める割合は日本と比較しても低いものです。さらに、上場子会社という形態は一時的なものです。たとえば、事業部門を IPO で切り出して、上場子会社とするものの、5 年程度経過後は100%子会社に戻したり、売却することが一般的と言われます。

日立製作所は2006年には22社あった上場子会社を、今では日立化成と日立金属、日立建機、日立ハイテクノロジーズの4社にまで減らしています。日立製作所の東原敏昭社長は上場子会社について「4社のトップと世界で事業を伸ばしていくためにどうすればいいかを議論している」とグループ再編の進捗を語っています。

「コモディティー化する事業や低収益の事業はやめてきた。逆に社会イノベーション事業を展開する上で、上場子会社をもっと取り込む必要もあった。12年以降、事業の入れ替えを徹底的に行った」という東原社長の発言を多くの上場企業経営者は噛みしめるべきでしょう。

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