資生堂のROICを予想してみる

資生堂は11月8日に2018年第3四半期の決算を発表しました。売上高8,058億円、営業利益1,014億円と過去最高を更新です。売上高は前年比+10.2%、営業利益は前年比+43.5%となっています。さらに営業利益率は12.6%と二ケタを達成しています。

市場が懸念していた中国人向けの販売動向は蓋を開けてみれば、中国向けの売上高が前年比+33%(1~9月期)と地域別でもっとも高い成長となりました。ただ、いつも言っているように損益計算書の数字だけでは、資生堂の業績を語るには十分ではありません。

資生堂は、2018年度3カ年経営計画の中で中長期的な企業価値向上をめざすべく、次のような2020年の財務ターゲットを明確に打ち出しています。


出典:資生堂2018-2019年度 経営戦略・計画

ROEで14パーセント以上、ROICで12パーセント以上、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を100日以下に設定しています。

従来と違う点は、株主資本コストを5パーセント、負債を含めた加重平均コスト(WACC)を4パーセントに設定しているところです。まさに資本コストを意識した経営を行っていくことを打ち出しています。

さらにCCCをKPIに設定していることからも、資生堂がキャッシュフローを重視していることがうかがえます。CCCの改善は運転資本の圧縮につながり、さらにフリーキャッシュフローの増加に寄与するからです。

それでは、実際の資生堂のROICはどうなっているのでしょうか。資生堂は今回の決算発表で、通期の営業利益予想額を1,100億円のまま修正していません。そこでその営業利益を使い、運転資本は9月末実績の数字を使って私たちで試算してみました。その結果、2018年12月期の資生堂のROICは11%の見込みとなりました。

1月~9月の営業利益は先述した通り、1,014億円ですから通期の営業利益予想額1,100億円に対して進捗率は92%ですから、12月時点で大幅な増益が期待されます。したがって、ROICに限って言えば、2020年の目標値12%を今期で達成することは十分に考えられます。

また、私たちの試算では資本コストは5.4%となりましたので、この数字でEVAを計算すれば、次の通りとなります。

EVA38,658百万円=投下資本689,004百万円×(ROIC11%-WACC5.4%)

一年間でどれだけの価値を創造したかを表すEVAは387億円です。まさに企業価値を高める経営をしていることがわかります。中期経営計画で、企業価値向上に資する財務ターゲットを明確に打ち出し、投資家にも公表し、そのターゲットを実際に達成し企業価値を高めていく。さすが「プロ経営者」といわれている魚谷社長が経営しているだけのことはあります。

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