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ネーミングの妙

ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンク)が、「ハイブリッド社債」を発行します(8月24日付IR情報)。3.3兆円のARM社買収資金の一部に充当する予定です。2016年6月期において、約12兆円の有利子負債を抱えているソフトバンクの格付けは、現在シングルAマイナス(日本格付研究所)です。この資金調達は、一段の格付け悪化を防ぐためと言われています。

「ハイブリッド」と聞けば、まずは自動車を思い浮かべる人が多いと思います。ハイブリッドとは「異質なものを組み合わせたもの」という意味です。金融の場合、株主資本と有利子負債の中間的な位置づけを意味します。

つまり、エクイティファイナンスとデットファイナンスのちょうど中間の資金調達手法です。会計的には、あくまでも有利子負債ですが、格付け会社の判断で一定割合が株主資本と見なされることから、格付けの悪化を防ぐことができるわけです。

なぜ、一定割合が株主資本とみなされるのか。それは債務の支払い順位が、一般の有利子負債よりも、劣後するからです。ソフトバンクの優先順位に関する説明は次の通りです。


本ハイブリッド社債は、当社の清算手続き等における債務の支払いに関し、一般の債務(当社が2014年及び2015年に発行した劣後債を含む)に劣後し、当社の最上位の優先株式(今後発行した場合)と実質的に同順位として扱われ、普通株式に優先する。


債務の支払順位が一般の債務よりも低いわけですから、投資家の要求収益率は高くなります。もちろん、株主の要求収益率と比較すれば低くなるでしょう。投資家の要求収益率は企業の視点で言えば、コストです。したがって、企業からすれば、「普通社債による調達コスト<ハイブリッド債による調達コスト<株式発行による調達コスト」ということになります。

8月17日付日経新聞によれば、ハイブリッド型の資金調達は、今年8月時点で約4兆8000億円と既に前年通年の実績の倍近くになり、ソフトバンクの1兆円を除いても過去最高だといいます。その理由は、ネーミングの違いだというのです。ハイブリッド債は、従来は劣後債と呼ばれていました。経営再建資金のイメージが強い劣後調達が「ハイブリッド」になった途端、人気化したというのです。

リストラと言わず、リサイクルという呼び方をしている企業もあります。中身は全く変わらなくても、ネーミングによって私たちは簡単に受け入れてしまうことがあります。私たちは常にネーミングの先にある本質的な意味合いを見失わないようにしたいものです。

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