決算書は意思決定に使えない(前半)

企業は、継続的に事業活動を行うことが前提として運営されます。資金提供者である株主には、一定期間(通常は1年毎)にどれだけの儲けがあったのか、利益額を報告する必要があります。言い換えれば、一定期間ごとに株主への配当可能額を計算する必要があります。

利益計算のためには、かかった費用を期間毎、製品、商品ごとになるべく公平に配分する計算が必要になってきます。

全部原価計算という原価の計算方法も、製造にかかる費用(材料費、労務費、経費)を製品毎に配分し、期間費用を計算するという考え方です。しかし、こうした公平性を重んじた、いわゆる割勘計算では意思決定には使えません。

経済的にどちらが有利かという判断は、どれだけ多くの現金を手に入れるか、企業価値向上につながるかが大事なのです。つまり、決算書の利益は使えないのです。ここで具体例をあげて考えてみましょう。

あなたと友人Aは、引越しに伴いトラックをレンタルしたいと考えているとしましょう。トラック1台のレンタル料金は、1日60,000円の固定料金に加えて、走行距離1キロにつき200円という走行料金がかかることになっています。あなたの引越し先までは往復でも50キロで半日もあれば十分です。

一方、友人Aの走行距離は100キロです。それでも、レンタルするのは1日で十分だとします。それでは、あなたと友人Aはいくらずつの料金を負担すればいいでしょうか。

実は、公平な負担額を求める唯一絶対な方法は存在しません。普通は、変動費(=走行料金)のほかに固定費(固定料金)を加え、1キロ当たりのコストを求め、それにあなたと友人Aのそれぞれの走行距離を掛けて費用を配分する場合が多いでしょう。

自分が走った走行距離の分(=変動費)だけを負担するということになった場合、固定料金(=固定費)が宙にういてしまうからです。1キロ当たりの平均コストを計算してみましょう。

$$200円+\frac{ 60,000円 }{ 150キロ }=200円+400円=600円$$

したがって、これをあなたと友人Aの走行距離に応じて配分すると、

$$あなた:600円×50キロ=30,000円$$$$友人A: 600円×100キロ=60,000円$$

あるいは、こんな方法を思いついた人もいるかも知れません。固定料金60,000円は割勘にしてあとは、走行距離に応じて支払う。
$$あなた:30,000円+50キロ×200円=40,000円$$$$友人A:30,000円+100キロ×200円=50,000円$$

もしかしたら、友人Aは総額を割勘にするという提案をしてくるかも知れません。つまり、総額が90,000円ですから、45,000円ずつということです。友達思いのあなたは、承諾するかも知れません。

このように「公平性」という原則にたって、二人の間でいくらずつ負担するかという問題には、理論的な正解はないのです。公平性を重んじた、いわゆる割勘計算は意思決定には使えない。だとすれば、どうすればいいのか。次回に続きます。

 

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