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高利回り物件と低利回り物件(増田社長)

居住系の収益物件の場合、一般論として地方の築古アパートなどを高利回り物件、都市部の築浅一棟レジデンスなどを低利回り物件として流通する場合が多いようです。またキャッシュフローの観点からは、投資初年度の単年度収支のインカム回収率が高いものを高利回り物件、その逆を低利回り物件と考えています。

このような事情を前提として、その本質的な意味について私なりの見解をお伝えしようと思います。まず、誤解を恐れずに申し上げるならば、業界で使われている高利回り物件という表現には嘘があり、買方に誤った情報をアナウンスしている可能性が高いと思います。

これは、仲介業者が取引を早期に成立させるために、意図的に画策しているという訳ではありません。そもそも、売主が物件を売却しようと決める場合、多くの場合は仲介業者に売却理由を伝え、仲介業者はそのヒアリングをもとに市場性を吟味しながら流通価格を査定します。そして、売主と仲介業者の打合せにより売却希望価格を決定し販売活動を開始します。この時に、販売価格の目安として表記されるのが表面利回りとなります。

つまり、市場における流通価格を想像しながら、売主と仲介業者により値付けされた結果として表面利回りがある訳で、結果として高利回り物件になることがあるということです。売方が高利回り物件として市場に供給しようとする試みを選択した背景には、それなりの意味がある訳で、基本的に売主は、少しでも物件を高く販売したいのが本音になります。

表面的に高利回りのように見える物件には、それなりの罠が仕掛けられている可能性が高いと心得ておくべきでしょう。前回の内容でも触れましたが、不動産の本質的な利回りは、NCFによる税引後IRRの測定により可能になります。つまり、築古の高利回りのように見える物件でも、NOIの長期安定を期待するならば、応分の資本的支出が必要になり、将来のCAPEXを織り込む必要があるかもしれません。また、ある程度のCAPEXを考慮していたとしても、安易な資本改善では将来の大幅な賃料下落を余儀なくされる可能性があります。NOIの下落は将来の売却価格に暗い影を及ぼすことでしょう。

不動産IRRにおける最も感応度が高い要素は、キャッシュフロー成長率である賃料の年変動率(多くの場合は負)と将来の売却価格になります。将来の売却価格の査定については、単なる収益還元法による推定のみならず、必要とあらば土地の力による清算価値(開発法価格)なども検討して、総合的に吟味する必要があります。

私の経験上、高利回り物件として流通している物で、あまりよいものはありません。中古のタワーパーキングはかなりの高利回り物件として流通しますが、将来のメンテナンスコストを勘案すると、怖くて買えないというのが実情です。

私が経験した中で最高の低利回り物件は、築40年の下北沢の3F建ての小店舗でした。2014年当時で表面利回りは6.0%でしたが、FCRは5.1%もありました。店舗の場合、固都税以外は何もかからないので、経費率が極めて低くなるからです。また、その店舗は再開発のど真ん中に立地していたので、将来の大幅なキャピタルが保証されていました。自己資金IRRの予測でも10年保有のフルレバで20%を越えるだろうと見込んでいました。

結局、最後の最後で取得できず、とても苦い経験となりました。実のところ、このように低利回りのように見える物件の中には、優良物件が隠れているということが意外に多いものなのです。そんな事情なので、最近は下北沢には行きたくありません。(笑)


私が不動産投資の達人として尊敬する増田社長のブログです。増田社長の自己紹介はこちらをご覧下さい。

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