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IRRとROICの違いを解き明かす

ファイナンスを初めて学ぶ方の中には、しばしば「IRRとROICの違い」について混乱する方がいらっしゃいます。IRRはInternal Rate of Return(内部収益率)の頭文字を取ったもので、一方、ROICはReturn On Invested Capital(投下資本利益率)の頭文字を取ったものです。

混乱の原因は、IRRがキャッシュフローを用いて計算され、ROICが税引後営業利益と投下資本を用いて計算される点にあります。初学者はファイナンスがキャッシュフローを、会計が利益を扱うと学ぶため、なぜROICの計算でキャッシュフローが使われないのか理解できないのです。加えて、どちらの指標も資本コスト(WACC)と比較するべきだと教えられることで、さらに混乱が生じます。

実は、IRRとROICは使用目的が異なります。IRRは投資判断の指標で、ROICは業績評価の指標です。これらの違いは視点に現れます。IRRは現時点から長期的なキャッシュフローを予測し、資本コストと比較して投資判断を行う指標です。


出所:オントラック作成

一方、ROICは1年間(会計年度)の企業(または事業)の業績を評価する指標です。業績評価にはキャッシュフローは適切ではなく、利益を使用します。キャッシュフローが適切でない理由は、ある年に設備投資を行い、キャッシュフローがマイナスになったからと言って、必ずしも業績が悪いとは言えないからです。利益の中でも税引後営業利益が選ばれるのは、それが債権者と株主に帰属する利益概念だからです。ROICは税引後営業利益を投下資本(有利子負債と株主資本の合計)で割って計算され、資本コストと比較して1年間の企業(または事業)の価値創造を評価するのです。


出所:オントラック作成

以上の説明をまとめたのが、上の表です。視点によって異なる目的を持つIRRとROICについて混乱する初学者も多いかもしれませんが、IRRは投資判断の指標であり、ROICは業績評価の指標です。IRRはキャッシュフローを用いて長期的な投資判断を行うための指標であり、ROICは税引後営業利益と投下資本を用いて1年間の企業(または事業)の価値創造を評価するための指標です。キャッシュフローと利益を使い分ける理由や、それぞれの指標が資本コストと比較される背景にも理解を深めることが大切です。

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