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ワーキング・キャピタル・スタディ 2023‐2024

PwCコンサルティングが2024年3月に「ワーキング・キャピタル・スタディ 2023‐2024 ―キャッシュ・イズ・キングの帰還」と題するレポートを発表しました。このレポートは、グローバル企業17,000社を対象に運転資本の分析を行い、経済環境の変化が運転資本に与える影響及び運転資本への関心の高まりを探っています。

レポートの主なポイントは以下の通りです:

1. 運転資本回転日数(いわゆるキャッシュ・コンバージョン・サイクル、CCC)が多くの経済圏で改善しており、キャッシュ増加が観察されている。特にEU地域の企業では改善が顕著。

2. サプライチェーンの混乱が解消されたことで、企業は在庫管理をより効率的に行えるようになった。また、EUとアジア地域で在庫管理の方針が大きく転換している。

3. 経済の先行きは依然として不透明であり、インフレと金利の上昇が長引く可能性がある。これに対応するためには、慎重な運転資本管理が重要である。

4. 大企業では売上債権と在庫の管理が改善されているが、中小企業では依然として格差が存在している。

5. テクノロジーの導入は、運転資本管理の効率を向上させる重要な要素である。適切な人材の確保とテクノロジーの選択、導入が今後の課題となる。

6. 運転資本管理の改善によりキャッシュが増加し、これが投資や配当のための豊富な財源となっている。

私が特に注目したのは、5番目の運転資本管理のデジタル化です。テクノロジーの導入は透明性の向上、迅速なプロセス、エラー削減など多くの利点をもたらしますが、多額の初期投資と経営トップの強い支持が必要です。さらに、既存のシステムやプロセスの問題、データの質、適切な人材の確保、ビジネスソリューションの統合、セキュリティとガバナンスの複雑さが課題となるでしょう。

運転資本管理は、もともと、購買、製造、営業といった多様な部門にまたがり、各部門の利害が対立することもあります。例えば、製造部門が在庫管理を推進している一方で、購買部門は大量発注によるボリュームディスカウントを重視し、在庫削減には関心を示さず、営業部門は機会損失を避けるために過剰な在庫を保持する傾向があります。

このように部門間での利害の対立は、運転資本管理の効率化を困難にする要因の一つとなっているのです。これらの解決には、経営トップのコミットメントと部門間の適切なコミュニケーションが必要なのです。

最後に、このレポートが示す通り、運転資本の効率的な管理は、不確実な経営環境の中でも企業が安定した成長を維持する上で極めて重要です。運転資本管理の重要性を再認識する上でもこのレポートに目を通してみてください。

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