『数学×会計』は、数学を「言語」として捉え、それを会計にどう活かすかを丁寧に解説する一冊です。著者の金子智朗氏は、理系のバックグラウンドを持ちながら、会計の実務と教育の最前線で活躍されている専門家。「数学を捨てる」文化に対する問題意識を背景に、数学の重要性を主張しています。
本書は、ガリレオの「宇宙は数学という言語で書かれている」という言葉を引用し、数学が会計の根幹を支えていることを説きます。損益分岐点の計算における一次方程式や、投資評価に用いられるNPV(正味現在価値)やIRR(内部収益率)など、その考え方の背景にある数学的な意味を丁寧に解説してくれています。
本書は「会計の基礎」と、数学的な考え方をを具体的に会計へ応用する「数学と会計」の二部構成となっています。率直に言って、私は「会計の基礎」もめちゃくちゃ勉強になりました。「そもそも、なぜ、会計ではそのような考え方をするのか?」といった会計の本質の部分をわかりやすく解説してくれているのです。
また、「数学と会計」では、数学が苦手な人にも配慮し、難解な数式や概念を具体例やストーリーを用いて解説する工夫が随所に見られます。たとえば、「損益分岐点の求め方」や「価格戦略」に数学をどのように使うかを実例を交えて説明してくれていて、とても理解しやすくなっています。
「数学なんてビジネスには関係ない」と思っている方こそ、本書を手に取るべきです。ビジネスと会計とは無縁ではいられません。その会計には、数学の考え方が深く入り込んでいます。本書は、そうした「見過ごされがちなビジネスにおける数学の重要性」を丁寧に解き明かし、私たちを「数学的な考え方を仕事に活かせる」新たなステージへと導いてくれるでしょう。
『数学×会計』は、会計やファイナンスの実務に携わる方だけでなく、経済合理性を追求するすべてのビジネスパーソンにとって必読の一冊です。「数学が苦手」という壁を超えるためのヒントが詰まった本書を読めば、苦手だと思っていた「数学という言語」の魅力を垣間見ることができるに違いありません。