2022年6月11日付日経新聞によれば、プライム上場企業の2021年度のROEは9.7%と前年度から約2.5ポイント改善しました。ROEは、当期純利益率と総資産回転率と財務レバレッジの掛け算で表すことができます。ROEの改善は、プライム上場企業の21年度の当期純利益率が5.6%と過去最高だったことが寄与しました。
ところが欧米企業と比較してみると違った景色が見えてきます。プライム上場企業のROE9.7%に対して、米国企業はROE22.0%、欧州企業は16.0%と格差は従来より拡大しているのです。これは、主に収益性の差から来ています。日本企業の当期純利益率が5.6%と過去最高だというものの、米国企業は12.0%、欧州企業は9.0%の当期純利益率となっているのです(下図ご参照)。
さらに日本企業は効率性の改善も鈍化しています。欧米企業の数値はないものの、総資産回転率(=売上高/総資産)が0.68回と低い水準に留まったことが指摘されています。日経新聞は、「コロナ禍に備え手元資金を厚くしたほか、供給網の混乱で在庫も増やしたことが資産効率の低下を招きROE改善度合いが鈍化した。」としていますが、これは何も日本企業に限ったことではないでしょう。
私はむしろ、プライム上場企業にバランスシート経営が浸透していないことが一因であると考えます。総資産回転率は、総資産を活用して、どれだけ効率的に売上高に結びつけているかを示す指標です。つまり、プライム上場企業の中には、いまだに売上高に結びつくとは限らない資産、例えば、手元現金、不動産、持ち合い株式などの有価証券等を保有している企業があるのではないでしょうか。いち早く、営業利益率や当期純利益率を重視するPL経営から脱却し、投下資本(インプット)からどれだけの利益(アウトプット)を稼ぐのかというBS経営へのシフト、さらには、投下資本そのものの増加を目指す雪だるま経営に大転換していくことを望みます。