2023年10月11日付日経新聞によれば、資本効率の改善に向け、賃貸不動産の売却を検討する企業が増えているようです。株主が嫌がる資産として、1.現預金、2.有価証券、3.不動産、が挙げられます。これらの資産に共通することは、株主が自分で投資できる資産だということです。わざわざ事業経営のプロである事業会社に投資して欲しくありません。自分にはできない事業経営のプロとして、経営者に事業でリターンをあげてもらいたいのです。
こうした株主の想いを知ってか、知らずかわかりませんが、不動産売却を信託銀行と協議する上場企業が増えているのです。東京証券取引所が資本コストや株価を意識した経営を上場企業に要請した春以降、こうした動きは活発になっているようです。
日経新聞の記事には「投資家が求める利回りである資本コストは6~8%前後で、不動産は都心部のオフィスでも期待利回りは3~4%程度とされる。賃貸不動産を抱えるほど資本効率が低くなりやすい傾向があるという」とあります。「利回り<資本コスト」と逆ザヤだからダメということにはなりません。
なぜなら、その事業資産のリスクに見合ったリターンを稼げていればいいからです。都心部のオフィスビルのリターンと企業全体の資本コストである6~8%と比較しても意味はありません。ただ、先述したように株主は事業経営の専門家としての経営者には、不動産ではなく「本業」で高いリターンを実現して欲しいと期待しています。
だからと言って、不動産の売却だけでは問題は解決しません。売却で得た資金をどう成長につなげるかが大切です。三菱UFJ信託の新田氏も「M&Aなど具体的な成長ストーリーを伴わなければ説得力に欠ける」と述べています。信託銀行には、仲介手数料目当ての売却ありきの議論ではなく、取引先企業に対して、企業価値の向上策を含めた総合的な提案をしてもらいたいと思います
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