2017年4月24日付日経新聞によれば、三菱重工業は仏原子力大手、アレバの原子炉子会社に約400億円を出資することを仏電力公社(EDF)と大筋で合意したそうです。
三菱重工のアレバグループへの出資額はこれまでの出資分と合わせると総額700億円超。原発事業は採算の悪化から撤退を決断する大手も出ていますが、三菱重工はアレバへの追加支援で事業継続の意思を示した形です。
ちなみに、アレバは2016年まで6年連続赤字で累積損失が1兆円を超えています。さらに、三菱重工業は2006年にアレバと提携を開始したものの、
原発事業ですから日本の国防の観点から事業継続せざるを得ないという判断も背景にあるのかも知れません。ただ、気になるのは同社関係者の発言です。
「ここでアレバから退けば新型炉の開発コストも捨てることになる」
この発言は問題です。なぜなら、すでに支払っている開発コストはサンクコストであり、事業継続するか否かの意思決定とは無関係だからです。
これは、ブログ「事業を売却すべきか?(ある大手商社の事例)」で説明した「With-Withoutの原則」からも説明できます。投資判断は、「投資をした場合(アクションを起こした場合)―With」と「現状維持の場合―Without」のそれぞれのキャッシュフローの差額で行わなければならないというものです。
ここでは、「追加出資を実行して事業継続する場合」と「追加出資を行わず撤退する場合」のキャッシュフローの差額をとることになります。このとき、過去のキャッシュフローは、どちらの場合でも発生していますから、差額をとれば消えてしまいます。このことからも、サンクコストは未来の意思決定には無関係であることがわかります。
三菱重工は客船事業の大型損失や、納期が大幅に遅れている国産ジェット旅客機「MRJ」を抱えています。これらの事業を継続しているのは、同社がサンクコストにとらわれてのことでないことを願ってやみません。