2017/9/20付日経新聞に「三菱UFJ、9500人分の仕事自動化」という記事が掲載されました。以下、記事の一部抜粋です。
三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長は19日、国内の事務作業の自動化やデジタル化で「9500人相当の労働量の削減を実現したい」と明らかにした。人数は三菱東京UFJ銀行の国内従業員の約30%に相当する規模だ。
さらに、2017/10/29付日経新聞では「メガ銀 大リストラ時代」と題して、 みずほフィナンシャルグループが、21年度には8千人分、26年度には1万9千人分の業務量の削減する目標をたてたといっています。じつにグループ全体の3分の1に近い規模だといいます。また、三井住友FGも20年度までに4000人分を減らすとのことです。
三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長は、自動化を進める一方で、従業員をよりクリエーティブな仕事に振り向けるとし「全行レベルで生産性を高めたい」と語っているそうですが、デジタル化にとって代わることが可能な定型業務をやっていた銀行員が果たしてクリエーティブな仕事ができるようになるのか?ということがあります。
考えてみれば、いつの間にか私たちは銀行の支店に行くことが少なくなりました。公共料金や税金の支払いもコンビニで済ませるようになりました。振込も今やネットバンキングが当たり前です。自分の銀行口座からの現金の引き出しも電子マネーが一般化する流れの中で今後ますます必要なくなるでしょう。そう考えると今後ますます支店機能は必要なくなっていきます。ましてや、都心の一等地になど支店は必要ないことになります。不動産賃貸業をするなり売却するなり、他の事業を行った方がキャッシュを稼ぐことができるでしょう。
厳しいことを言うようですが、銀行のクリエーティブな仕事とはなんでしょうか。資産運用の相談はどうでしょう。そもそも金融リテラシーの低い日本人の顧客を相手にしてきた銀行の人間です。まったく勉強が足りてません。ポートフォリオ理論なども知らない人が大半でしょう。また、日本の銀行の営業担当者は自社が売りたい金融商品を勧めることばかりです。グローバルな視点で本当に顧客が必要な金融商品を奨めてくれる行員などまずいません。海外ファンド等など取り扱っていないものについてはまず相談にのってくれないでしょう。
ましてや、運用の世界は、今後は人工知能(AI)にとって代わるようになってくるといわれています。私たちがアマゾンで買い物をするとき、おすすめの商品が自動的に私たちに目の前に出てきます。私たちが期待するリターンとリスク選好度合い、運用期間、運用金額などをあらかじめ入力しておけば、世界の金融商品から私たちに適したものを人工知能(AI)薦めてくれるなんてことは、すでに実現しているサービスです。
融資などの与信判断はどうでしょうか。三菱UFJ銀行の三毛兼承頭取は、今月、「人工知能(AI)の導入などで徹底的に自動化を進めていく」という方針を打ち出しています。例えば住宅ローンの受付業務を完全に自動化できれば、年間2500時間の労働量の削減につながるといいます。
それでは、定型化できないと考えられる企業向けの融資はどうでしょうか。財務諸表などの過去の数字による財務分析と企業の担保を前提とした貸し出しに安住してきた銀行員です。某メガバンクでコンサルティングプロジェクトや融資担当者の実態把握力を高める研修をやってきた私からすると、銀行員の将来予測に対するアレルギーにはすごいものがあります。取引先の企業に対して、将来を見据えた与信判断ができるのか、疑わしいと思います。現在の融資担当者ですらこの有様ですから、定型業務をやっていた行員が融資担当になれるとは思えません。
日本の銀行のお客様に提供するサービスのレベルをあげていかないと、このままではグローバルで生き残ることは出来ない。これは私が銀行員をやめた2000年にはすでに分かっていたことです。クリエーティブな仕事を創ろうともしてこなかった銀行経営者が今さらあたふたしても遅いのです。わりを食うのは経営者ではなく、現場の行員なのです。
大企業に勤めているからといって、安心はできない時代です。自分は何ができるのか、そして何をしたいのか、