三菱商事が世界最大級の太陽熱発電プロジェクトに参画するという記事が本日の日経新聞にありました。
スペインの新エネルギー大手アクシオナ傘下の企業アクシオナテルモソーラーに15%(約50億円)出資、太陽熱発電設備を共同運営するということです。
三菱商事は出資とあわせ、三菱東京UFJ銀行、みずほコーポレート銀行、日本政策投資銀行と計3億ユーロを融資するとあります。
言ってみれば、三菱商事はデットとエクイティの両方でこのアクシオナテルモソーラー(=プロジェクト)に投資していることになります。
三菱商事は、どのようにこのプロジェクトの投資判断を行ったのでしょうか。ここでは簡略化のために、三菱商事がエクイティのみで投資したと仮定しましょう。
株主としての三菱商事に帰属するフリーキャッシュフローは、企業価値評価に使う次のFCFではありません。
FCF=営業利益(1-税率)+減価償却-設備投資-運転資金の増加額
株主に帰属するキャッシュフローをFCFE(Free Cash Flow for Equity)と呼び、株主に帰属するキャッシュフローであるFCFEは、次のように定義できます。
FCFE=当期利益+減価償却-設備投資-運転資金の増加額-負債元本の返済額+新規負債借入額
なぜ、営業利益からではなく、当期利益から始まるのかと言えば、株主以外の全ての利害関係者に帰属するCFを差し引いたあとの利益だからです。
さらに有利子負債の増減が加わることに注意してください。借入れだろうがなんだろうが約束通り、返済さえすれば、株主に帰属するCFに違いはありません。今回のケースでいえば、三菱東京UFJ銀行、みずほコーポレート銀行、日本政策投資銀行からの新規借入れと返済の部分です。
こうして算出したFCFEに更に三菱商事の出資割合15%を掛けるのを忘れてはいけません。このFCFEのIRR(=内部収益率)のことをEquity IRRと呼びます。
通常のFCF(=FCFF)のIRRは、資金調達の影響を受けないプロジェクトの収益力をあらわすのに対して、このEquity IRRはスポンサー(=株主)にとっての収益率をあらわすのです。
スポンサーはプロジェクトの返済能力とレバレッジ(=借入れ)のバランスをとりながら、資金調達の方法を考えることになります。
レバレッジをかければ、スポンサーにとってのIRRは高まりますが、それと同時に返済能力(=返済余力)は低下するからです。
今回のプロジェクトはこのEquity IRRが三菱商事の投資案件に課せられるハードルレートよりも高いことから、投資に踏み切ったのだと思います(もちろん、それだけが理由ではないでしょうが)
参考ブログ「フリーキャッシュフローには2種類ある」