2019年6月15日付の日経新聞によれば、ゆうちょ銀行が勧誘時の健康確認を怠るなど、不適切な手続きで高齢者に投資信託を販売していたといいます。約230ある直営店のうち約9割の店で発覚しており、社内ルールなどへの抵触は1万5千件以上にのぼるといいますから驚きです。2017年6月のブログ「預金1000兆円突破時代の運用方法とは」に私はこんなことを書きました(一部抜粋)。
一方で、日本郵政がこれまでの「貯金頼み」の経営を転換していくという報道がありました。グループの日本郵便とゆうちょ銀行が、7日に投資信託の販売拡大策を発表したのです。投信の販売・紹介拠点を大幅に増やし、全国約2万の郵便局のうち9割で投信事業を手掛けるようになるといいます。足元で約180兆円にのぼる貯金額をねらって、投信販売による手数料収入を強化し、経営の軸足を「貯蓄から投資へ」と移していくとのことです。
運用の素人(失礼ですが)の窓口担当者がこれまた金融リテラシーがない高齢者に投信を販売していくのかと思うと暗い気持ちになります。販売している当事者ですら自己資金を預貯金以外で運用したことなどないでしょうからね。リターンばかり説明してリスクなど説明できはしないでしょう。
今回のようなことが起きることは簡単に予見できることです。ゆうちょ銀行の社長は足利銀行の頭取経験者のようですが、予見できなかったとすれば、社長失格です。
私たちはもう一度、ファイナンスの原点にもどりましょう。ファイナンスのポートフォリオ理論ではこう結論づけています。合理的な投資家はマーケットポートフォリオと国債などのリスクフリー資産を組み合わせたポートフォリオを保有すべきである。もし、私たちが全くリスクを取りたくなければ、すべての資金を例えば「個人向け国債変動金利型10年満期」に投資すればいいわけです。
マーケットポートフォリオとリスクフリー資産の保有割合は、投資家としての私たちのリスク許容度によって変わってきます。ただ、リスク資産として保有するのは、マーケットポートフォリオであるべきです。
理論的には、マーケットポートフォリオは市場のすべての資産を含んでいることになりますが、実際には市場には不動産、未上場株式など証券市場では取引されていない資産は多くあります。したがって、マーケットポートフォリオはあくまでも抽象概念です。
しかし、投資家は国債などのリスクフリー資産と十分にリスク分散された資産を所有すべきだ、ということは間違いありません。このような考え方から、「TOPIX」や「S&P500」などのインデックス(指数)に連動するファンドが生まれたのです。
ファイナンスを知らない金融機関の人間のアドバイスを聞くよりも、自分で勝手にインデックスファンドと国債に投資するのが一番だというのが結論です。