スズキのハンドルさばき

スズキを社長、会長として40年以上率いた鈴木修会長の退任が報道されました。鈴木会長の強力なリーダーシップのもと、今やスズキはインド、欧州など海外売上高が7割を占める小型車のグローバル企業に成長しました。今後は、息子の鈴木俊宏社長とそれを補佐する専務役員6人のマネジメントチームによる経営体制にシフトします。

2021年1月18日、菅首相は施政方針演説で「2035年までに、新車販売で電動車100%を実現する」との方針を示しています。また、東京都は2030年に都内の新車をすべて電動車にする方針を発表するなど、自動車業界をめぐる脱炭素化の流れはもう止められないものとなっています。

もちろん、政府のいう電動車にはEVだけでなく、ガソリンエンジンとモーターを併用するハイブリッド車(HV)も含まれます。スズキの新車も国内で約5割、世界ベースでも2割弱がすでにHVになっています。ところが、その大半がエンジンのオルタネーター(発電機)を発進時などに補助的に駆動モーターとして動かす簡易式HVです。スズキの得意とする軽自動車は決められた規格サイズがあります。これに大型バッテリーと高出力の駆動モーターを搭載する本格HVは、軽自動車の設計やコストを考えると難しいと言われます。

先月、スズキは4月からスタートする「中期経営計画(2021年4月~2026年3月)」を発表しました。その中で、連結売上高は新型コロナウイルス影響からの回復、インド市場の成長を見込み、過去最高となる4兆8千億円を目指すとしています。そして、営業利益率は積極的な研究開発投資を考慮して2020年3月期実績6.2%よりも低い5.5%としています。

出所:スズキ株式会社「中期経営計画」

2020年3月期の設備投資額は2364億円と10年前に比べてほぼ倍増しています。また、研究開発費も同1.4倍の1481億円になっています。中期経営計画でも、電動化対応など5年間で1兆円の積極的な研究開発投資、また1兆2000億円にのぼる設備投資を計画しています。実は、スズキの2020年3月期の設備投資額と研究開発費の売上高に対する比率は11%と日本車の大手7社で最も高い水準です。ところが、絶対額でみると他社と比較して1ケタ小さいのです。ちなみにフォルクスワーゲンの2019年12月期の研究開発費は1兆8000億円、トヨタ自動車の2020年3月期は1兆1000億円です。

資本業務提携しているトヨタ自動車との関係強化なくしては生き残れないかも知れません。実際に、今回専務となる石井氏はトヨタでインドにおける「打倒スズキ」戦略を進めていた人物です。

会長を退任する鈴木修氏はその時々の状況に合わせて、GM、フォルクスワーゲン、トヨタと提携先を替え、格上の企業と対等に渡り合いながら独自の経営を貫いてきました。今回の経営体制の変化を受け、軽自動車も含めてすべて電動という政府方針のなかでスズキはどう生きていくのか、まさにスズキの新しい経営陣のハンドルさばきが問われることになります。

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