岐路に立つ東京ガス

東京ガスが大きく舵を切ろうとしています。同社は、配当と自社株買いをあわせた総還元性向が6割と日本企業の中では、株主還元を積極的に進めてきた企業として有名です。その東京ガスが将来への投資に向けて株主還元政策の見直しを示唆しました。

日経新聞によれば、東京ガスの内田社長は昨年11月の会見で次のように発言しています。「太陽光や洋上風力、バイオマスなどの再エネ拡大や水素製造コスト低減に向けた技術開発をにらみ、投資や研究開発のギアを一段引き上げる」同社の中期経営計画によれば、2023年3月期までの3年間で1兆円を投資をする計画です。中でも再生可能エネルギー分野では1400億円を振り分ける計画となっています(下図)。


出所:東京ガスグループ 2020-2022年度 中期経営計画

東京ガスの2020年3月期の業績をみると売上高は1兆9,250億円、営業利益は1,015億円となっています(下図)。営業利益率は5.3%(前期比+1.0%)と改善傾向にあるものの、2016年3月期と比較すると半減しており、収益性は悪化傾向にあります。


出所:東京ガス ホームページ

東京ガスのセグメント別売上高をみてみましょう。下図の通り、売上高に占める割合はガス事業が60%(前期比-3%)、電力事業が16%(前期比+4%)と二つの事業で8割近くを占めています。連結売上高はほぼ横ばいですから、前期のシェアからの変化から、ガス事業の売上減少分を電力事業の売上増加で補った形になっていることがわかります。

出所:東京ガス ホームページ

次にセグメント別の利益率の推移をみてみましょう。ガス事業(赤線)は7.6%と改善傾向にありますが、2016年3月期のガス事業の利益率14.8%の半分です。電力事業(オレンジ線)は2.8%ですから、ガス事業よりも収益性が悪いことがわかります。今後は更なる競争激化で収益性は悪化していくことが予想されます。ちなみに、収益性の高い海外(再エネ・資源開発・LNGインフラ)や不動産の売上高に占める割合はそれぞれ2%しかありません。利益率は高いものの、東京ガスの業績への貢献度合いはわずかです。

出所:オントラック作成

このような状況では、東京ガスが株主還元政策を見直して投資拡大に舵を切るのもわからないではありません。ただ、東京ガスの発表に対する市場の反応は冷ややかでした。発表を受けて株価は10%以上下げたのです。中期経営計画(2020年3月発表)では2031年3月期のセグメント利益(営業利益+持ち分法投資利益)が20年3月期の約2倍となる2000億円になる見通しを示しました。今回、未来の成長による株主還元を示唆しながらも、2031年3月期のセグメント利益の上方修正はなかったのです。


出所:オントラック作成

東京ガスの投資効率はどうなっているのでしょうか。東京ガスの2020年3月期ROAは1.75%と低下傾向にあります。2016年3月期ROAが4.96%から3分の1近くまで落ち込んだことになります。ROAは投資した資産をどれだけ利益に結びつけられているかを示す指標です。再生可能エネルギーなどの成長分野に投資することは大切ですが、既存の不採算事業の入れ替えが最優先かも知れません。いずれにしても、東京ガスの動向から目が離せません。

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