攻めに転じる日立

2021年1月21日付日経新聞によれば、日立製作所が北米IT企業の買収に3,500億円超を投じる方針のようです。日立グループには2006年時点で上場子会社が22社ありました。2020年に日立化成を昭和電工に売却、日立ハイテクノロジーズを完全子会社化しています。残る2社の日立金属と日立建機の売却が実現すれば、日立が進めてきた上場子会社の再編・整理は完結します。

日立はリーマン・ショック後の2009年3月期に当時、製造業として過去最大の7,873億円の連結最終赤字を計上しています。まさに、生き残りをかけて事業構造の転換を進めてきたわけです。現在の日立の事業領域は、IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフの5つです。事業の内容は次の通りです。

出所:日立 統合報告書2020(2020年3月期)オントラック作成

2020年3月期連結売上収益は8兆7,672億円、連結調整後営業利益は6,618億円でした。そのうち、ITセクターの占める割合はそれぞれ売上高比22%、調整後営業利益比では37%です。

出所:日立 統合報告書2020(2020年3月期)

2021年3月期上半期では、コロナ禍の影響による世界的な市況悪化、需要減少により事業環境が厳しい中、ITセクターが業績をけん引しました。連結調整後営業利益は1,807億円のうち、ITセクターが占める割合は約60%となっています。このITセクターは、日立にとってインダストリーセクターとならんで成長のための重点投資分野といえます。

日立は2020年3月期より経営管理指標にROICを導入しています。日立の財務資本戦略の重点課題は以下の4つです。
1.ROIC管理の徹底によるさらなる収益力の向上
2.事業資産回転率向上による資本効率性の改善
3.適切な財務規律の中での適度なレバレッジを使った、WACCの低減
4.配当だけでなく自社株買いも考慮した株主還元策の実行による株主リターンの向上

まさに、資本コストを意識したROIC経営を加速させようとしています。また、日立は2021中期経営計画(最終年2022年3月期)では、基本的な投資方針として以下の3つをあげています。

1. M&A
デジタルソリューション事業の拡大と、ソリューションを提供するために必要となる、サービスやプロダクトの強化、および人材確保
2.研究開発
Cyber Physical System(CPS)実現のためにAI(画像解析、音声認識、機械学習などを含む)やロボティクス、電動化、セキュリティを中心に開発を強化
3.人財投資
外部からの採用および社内人財の育成により、デジタルを活用して新たなイノベーションを創出できる人財およびお客さまに最適なデジタルソリューションを提供できる人財の強化

事業ポートフォリオの再編を着実に行ってきた日立がさらなる成長に向けてまさに攻めに転じようとしています。他の日本企業も日立に続いて欲しいものです。今後の日立の動向に注目です。

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