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「お得」には落とし穴?退蔵益の真実

私の家の近所の立ち飲み屋では、1,000円(100円×10枚)のクーポン券を購入すると、11枚、つまり1,100円分のクーポン券がもらえるお得な仕組みがありました。しかし、久しぶりに行ってみると閉店していて、財布に残っていた500円分のクーポン券は紙くずに変わってしまいました。

思い返せば、父の日に娘からもらった「Starbucks eGift」も期限切れで無駄にしてしまったことがありました。こうしたクーポン券やギフトカードなどが期限切れで使用されずに失効すると、発行者側に利益が発生します。調べてみると、この利益は「退蔵益(失効益)」と呼ばれています。

考えてみると、退蔵益はさまざまな業界で見られます。

プリペイドカードや電子マネーの業界では、前払いでチャージした残高が使い切られないケースが多く、その未使用分が退蔵益となります。例えば、スターバックスやQUOカードのような企業では、利用されない残高が企業の収益に貢献しています。

交通機関やエンターテインメント業界も同様です。回数券や前売りチケットが期限切れで使用されなければ、その分が退蔵益になります。電車やバスの回数券、映画館のチケット、エステの回数券などでも、このようなビジネスモデルが多く見られます。

小売業や百貨店でも、商品券やギフト券が期限内に使用されないことが少なくありません。高島屋や近鉄百貨店などでは、未使用の商品券が退蔵益として計上されています。

これらの業界では、前払い型のビジネスモデルを利用して顧客からの支払いをあらかじめ受け、未使用となる部分を退蔵益として計上しています。たとえば、QUOカードを発行しているティーガイアは、3年連続で毎年40億円以上の退蔵益を計上しています。

退蔵益ビジネスの成功にはいくつかのポイントがあります。まず、顧客に「お得感」や「利便性」を感じさせることが重要です。たとえば、割引や利便性をアピールし、一度の支払いで長期的なメリットを感じさせることで購入意欲を促進します。しかし、実際にはその後に利用されないケースも多く、企業にとっては退蔵益が発生しやすくなります。

さらに、退蔵益を増やすためには有効期限や利用条件を設定することが効果的です。期限が設けられていると、顧客が使用し忘れる可能性が高くなり、結果として企業の利益につながります。

ただし、こうしたビジネスモデルは顧客満足度を損なうリスクもあります。利用できなくなると顧客が不満を感じることがあるため、リマインダー通知などで利用を促し、顧客ロイヤルティを維持する工夫が求められるでしょう。

退蔵益は企業の収益構造を支える一方で、私たち、消費者側には失効リスクがあります。こうした企業側の論理を知った上で、無駄にしないよう期限や利用条件を意識しながら賢く利用することが求められるでしょう。

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