経済の規模を人口で割った「1人当たり国内総生産(GDP)」は、生活水準や経済的な豊かさを比較する際に用いられる重要な指標です。しかし、Wall Streetの最近の記事「This Stat Could Transform How You View Economic Growth(この統計データは、経済成長の見方を変える可能性があるかもしれない)」によると、世界の高齢化が進むにつれ、1人当たりGDPの有用性に疑問が投げかけられています。
GDPは1年間に国内で生産された全てのモノとサービスの付加価値の合計額を示しますが、労働人口にカウントされない人々の貢献は含まれていません。その結果、高齢化が進むと、1人当たりGDPは実際の経済状況を正確に反映しなくなるのです。この問題に対する一つの解決策として、ペンシルベニア大学のヘスース・フェルナンデス=ビジャベルデ氏らは「生産年齢人口1人当たりGDP」という新しい指標を提案しています。この指標は、高齢化と出生率の低下が今後50~80年の間に世界経済を大きく変えることを考慮しています。ちなみに、OECDでは、生産年齢人口を15歳~65歳未満(64歳)までとしています。
日本の例を見ると、1人当たりGDPの成長率は低迷していますが、生産年齢人口1人当たりGDPでは、成長率は米国とほぼ同等です。このデータは、日本が「瀕死」とされた経済成長が30年間続いても、まだ明らかに富裕国であり、高い生活水準を維持していることを示しています。世界金融危機の最中だった2008年から新型コロナウイルス禍直前の2019年までの期間では、生産年齢人口1人当たりGDPの成長率は先進7カ国(G7)で日本が最も高かったというから驚きです。
昨年末、世界人口は80億人に達しました。多くの国で人口成長率はゼロに向かい、ピークに近づいています。このような状況の中で、1人当たりGDPは引き続き重要な指標でありますが、生産年齢人口が減少する多くの国では、「生産年齢人口1人当たりGDP」が経済活動の指標として特に有用になるでしょう。また、日本のGDPには日本企業が中国などの海外で生み出した付加価値は含まれません。米国と中国のデカップリングの進行によって、中国に生産拠点を持っていた日本企業に国内回帰の動きが見られるようになってきています。こうした状況がさらなる日本のGDPの増加に寄与するのは間違いありません。
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