2017年3月期に5529億円の債務超過を計上した東芝は、過去2年で、医療機器や業務用カメラ事業をキヤノンに売却し、白物家電を中国・美的集団に売却しました。18年3月期の2回目の債務超過を回避するためにも東芝メモリの売却先決定が必須という話がありますが、東芝メモリの売却先はいまだ決まっていません。
これに関連して、2017年9月13日付日経新聞の大機小機に「消えたメインバンク」という記事が掲載されました。この記事では、メインバンクをこう説明しています。
従来のメインバンク制度では、メインバンクは、(1)貸し出しシェア1位(2)政策投資株式保有(3)役員派遣――の「三種の神器」を通じて取引先企業の経営状態を把握し、ひとたび問題が発生すれば、人材を派遣して徹底した内部調査を実施し、取引先企業と共に将来を見据えた再建計画を策定した。
そのうえで、従来のメインバンクは、企業の再建計画に必要な資金を提供する役割を担い、返済猶予や債権放棄、そしてデット・エクイティ・スワップ(貸出債権株式化)を実施するなど、痛みを伴う支援も行ってきたというのに、東芝の債権回収を優先するメインバンクに苦言を呈しています。
さらに記事は、
長年の重要な取引先が苦境にある時にこそメインバンクの器が試されるというものだ。それとも、もはや日本からメインバンクは消えたのであろうか。
というなんとも情緒的な文章で終わっています。
従来のメインバンクが行ってきた「痛みを伴う支援」とは、メインバンクにとって経済合理性はないものの、取引先企業の存続のためには必要な支援ということでしょうか。
メインバンクたるもの、それが銀行の企業価値を毀損する可能性があっても取引先を支援すべきだということなのでしょうか。ここに欠けている視点は銀行の株主の存在です。銀行の経営者として東芝への対応に対して株主に対して説明責任があります。
あれだけの巨額な粉飾を行った東芝に対して、メインバンクは、もはや東芝の将来性がないと判断したと考えるのが自然です。ここで経済合理性を無視した対応をメインバンクがとるとしたら、それこそ、いつか来た道となりかねないと思います。