木村義弘氏の『事業計画の極意』は、事業計画に挑むすべてのビジネスパーソンにとっての必読書です。多くのビジネス書が戦略やマーケティングの理論を解説する一方で、本書はその一歩先を行きます。仮説と検証を繰り返しながら、成長ストーリーを形作るプロセスを具体的かつ実践的に指南してくれるのです。
事業計画は単なる数字や表の集合体ではありません。それは、企業の未来を描く設計図であり、成功への道筋を示す羅針盤です。本書はその視点を強調し、計画を生きた戦略に昇華させる方法を教えてくれます。
特に注目すべきは、第1章から第3章にかけて展開される「事業計画に向き合う心構え」と「全体設計」の部分です。木村氏は、事業計画を単なる提出物としてではなく、経営者やチームが未来を共有し、具体的なアクションへと結びつける道具として位置づけています。この姿勢は、単に事業計画を「作る」だけでなく、それを「使う」ことの重要性を深く理解させてくれます。
本書の中心テーマである「仮説と検証」に基づくアプローチは、スタートアップや新規事業開発において特に有効です。例えば、第4章のトップライン(収益予測)では、売上高の計画を考え始める前に二つの大きな考え方があるといいます。経年成長率型と収益構造分解型です。
「過去の5年の平均成長率は3%なので、今年も昨対比3%成長で考える」という考え方が経年成長率型です。この型に出会ったときは、木村氏は「これは計画ではなく、傾向ですね」と伝えるといいます。これは、事業計画策定者の意思と仮説が内在する計画ではないと手厳しい指摘がされています。
また、第5章のコスト構造の設計では、具体的な例を挙げながら仮説を立て、それを市場や実績データで検証していくプロセスが丁寧に解説されています。この部分は、計画を実際に動かしていく際のリアリティと緻密さが伝わってきます。木村氏が語る「コストは方程式」という考え方は、単に数字を計算するだけでなく、その裏にあるビジネスモデルやオペレーションの全体像を把握するための視点を提供します。
また、第8章では、事業計画をPDCAサイクルに組み込むことで、計画が形骸化せずに常にアップデートされ、現場で活用され続ける仕組みについて具体的なアドバイスが記されています。この章を読むと、事業計画が完成した時点で終わりではなく、むしろそこからがスタートだという認識が深まります。
本書は、スタートアップの経営者、新規事業を立ち上げる担当者、そして中堅中小企業の経営者に最適です。また、実務として事業計画を作成する機会がある人々――例えば、経営企画やコンサルタントなどのプロフェッショナルにも大いに役立つでしょう。
特に、事業計画に関する知識がまだ浅い人でも、基礎から応用までを段階的に学べる構成になっているため、安心して読み進めることができます。
木村義弘氏の『事業計画の極意』は、事業計画を「使い倒し」、企業の成長を実現するための実践的なツールを提供してくれる一冊です。本書を手に取れば、事業計画に対する見方が一変することでしょう。
ここまで体系的かつ情熱的に「事業計画」を語る一冊に出会ったことはありません。「事業計画の真髄を学びたい」「成長戦略を描く力を身につけたい」と願うすべてのビジネスパーソンに、自信を持っておすすめします。