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投資家と企業の対話ガイドライン

金融庁は、6月1日付「投資家と企業の対話ガイドライン」の確定を発表しました。

このガイドラインは、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードが求める持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けた「投資家と企業の対話」において、重点的に議論することが期待される事項を取りまとめたものです。このたび、このガイドラインの中で、実質的に日本企業に資本コストの算出が課せられたといえます。ガイドラインの該当箇所(1-2)にはこうあります。


経営陣が、自社の事業のリスクなどを適切に反映した資本コストを的確に把握しているか。その上で、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けて、収益力・資本効率等に関する目標を設定し、資本コストを意識した経営が行われているか。また、こうした目標を設定した理由が分かりやすく説明されているか。中長期的に資本コストに見合うリターンを上げているか。

出典:「投資家と企業の対話ガイドライン」一部抜粋


このガイドライン策定のためのフォローアップ会議の議事録が興味深いのですが、中でも、株式会社経営共創基盤CEO冨山氏の歯に衣着せぬ発言がスカッとします。以下、発言の一部ですが、資本コストに関する部分を引用したいと思います。


【冨山メンバー】
では、まずガイドラインのほうから。行ったり来たりしますけれども。まず最初の今の資本コストの話なのですが、これ、3ページなのかな、要は資本コストを越えているんだぜって言っている人が多いという話なんですけれども、これ、多分、資本コストという概念がわかっていないです

日本の経営者のほとんど。基本的なコーポレートファイナンスを全然勉強しない人が、多分、八、九割、もっとかな。川村さんが以前、株で資金を調達するときに、初めて資本コストというのを意識されたという話を本に書かれていたのを読んだことがありますが。前、あれかな、田中さんもおっしゃっていましたけれども、これ、社長、経営者も取締役なんで、ちょっと極端なことを言っちゃうと試験やらせたほうがいいんじゃないですかね。資本コストをぱっと言えますかと。一定の条件でこの会社の資本コストは幾らですかというのを計算できるかどうか。

言っておきますけれども、普通、世界の経営者は全員わかっています。基本的にMBAで教える程度のコーポレートファイナンスの知識は全員持っているので、要は、これ、多分、わかっていないんです。いまだに配当率とか、だから3%いいんじゃないかとか、そういうふうに思っている人が私は大層だと思います。

少なくとも自分の経験上そうです。なので、これは当然、こういうことはガイドラインに当然書き込むべきだし、私はガバナンス・コードにも書き込んで、ということは、資本コスト、何ぞやということを当然経営者は意識しなきゃいけないんで、これは全員、私は勉強し直すべきだと思います。これは多分、リテラシーの問題が圧倒的に大きいと思っているので、そこははっきりしたほうがいいような気がしています。

出典:フォローアップ会議(第14回)議事録  冨山氏発言の一部 ゴシックは筆者


資本コストに限らず、ファイナンスの知識を上場会社の経営者が身につければ日本企業は変わるきっかけになると思います。なぜなら、投資家との共通言語で自社の将来についてコミュニケーションすることが出来るようになるからです。それにしても、金融庁が音頭をとっていろいろとルール化しなければ、変わらない状況も何か悲しい気がします。

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