「ファイナンス思考(朝倉祐介著)」 

元ミクシィの代表取締役社長兼CEOの朝倉氏の「ファイナンス思考」を読みました。

この本を通して、朝倉氏は「PL脳」に侵された日本企業の経営者、ビジネスパーソンに警鐘を鳴らしています。朝倉氏のいう「PL脳」とは売上や利益といったPL上の指標を、目先で最大化することを目的視する思考態度です。

朝倉氏は「PL脳」から「ファイナンス思考」へと向かうべきと説いています。「PL脳」が売上高や利益で評価するのに対して、「ファイナンス思考」は、企業価値を高めるかという観点で評価することです。

また、「PL脳」の時間軸が四半期、年度など短期、他律的なのに対して、「ファイナンス思考」は、長期、未来志向、自発的であるとしています。最後に「PL脳」の経営アプローチが管理的、調整的であるのに対して、「ファイナンス思考」は戦略的、逆算型であるとしています。

そして、「PL脳」が進行すると企業は、売上至上主義、利益至上主義、キャッシュフロー軽視、バリュー無視、短期主義が症状として現れるといいます。

それでは、なぜ日本企業の経営者やビジネスパーソンが「PL脳」に陥ってしまいやすいのでしょうか。主な要因として朝倉氏は以下の6つをあげています。① 高度経済成長期の成功体験、② 役員の高齢化、③ 間接金融中心の金融システム、④ PLのわかりやすさ、⑤ 企業情報の開示ルール、⑥ メディアの影響をあげています。

本書で朝倉氏はファイナンスの「理論」や「知識」以上に「考え方」がより重要であると繰り返し述べています。そして、「ファイナンス思考」とは取りも直さず、「態度」や「思想」であり、究極的には「志」の問題だと指摘しています。

高齢化とともに現状維持を望む人々が増え、短いスパンでしか事の是非を判断できなくなっている日本企業の経営者、そしてビジネスパーソンは「PL脳」に侵されてしまっているのでしょう。

「昭和の残滓ともいうべき過去の成功体験に固執するPL脳に引導を渡し、未来を切り拓くのは自分たちであるという気概をもつ一人ひとりが個々に奮起する必要があるのではないか」と言い切る朝倉氏に、ファイナンス思考を広めて日本を再興したいという、まさに「志」を感じるのです。

ファイナンスの知識があれば、よりこの本の素晴らしさがわかるはずです。お薦めします。

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