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会社売却とバイアウト実務のすべて(宮﨑淳平著)

先週末は「会社売却とバイアウト実務のすべて」を読みました。この本は、会社売却・事業売却(売却型M&A)のノウハウを惜しげなく記した専門書です。会社売却を考えている中小・ベンチャーのオーナー経営者や事業会社のM&A・子会社売却担当者にとってのバイブルにしたいという著者の想いがまさに形になったものだと言えます。もちろん、タイトルにある通り、バイアウト(買収)する側の実務についても一部解説されています。

第二部の「物語で学ぶ あるオーナー経営者の会社売却」は、M&Aイグジットのプロセスが具体的にイメージできる形で展開していきます。事業計画を良く見せて会社を高く売却したいと考えるオーナー経営者や親会社に対して、売却後に数字の結果責任を問われることになる残存経営陣との利益相反の問題など、現場ではよく起こりがちなことについても言及しています。

また、素晴らしいのは、ストーリーの中で出てくるティザー・メモランダム、LOI(Letter of Intent)と言われる意向表明書などの資料、株式譲渡契約書、企業価値評価(Excelファイル)がダウンロードできることです。これが物語をよりリアルなものにしてくれています。

この本で注目すべきは、やはり第四部の「プロジェクションと企業価値評価」でしょう。この部分だけでも1冊の書籍となるのではないかというほど読みごたえがあります。企業価値評価の実務で非常によく使われることが多いEV/EBITDA倍率のEV(=Enterprise Value)についてもきちんと以下のように説明してくれています。


EV/EBITDAにおける「EV」は「事業価値」を指すケースと「企業価値」を指すケースが混在しています。しかし、著者としてはEV/EBITDA倍率法を実施する際には「EV=事業価値」とみなすべきと考えています。EBITDAを創出するのはあくまで事業資産であり、非事業資産(遊休資産等)ではないことから、論理的にはEBITDAの倍数は非事業資産を含まない価値である「事業価値」とするほうが合理的だと考えられるからです。


※参考ブログ「EV(=Enterprise Value)は企業価値ではない

このような類書では取り上げられることの少ないものの、実務者が気を付けるべき論点がきちんと説明されています。また、書籍では紙幅の都合で掲載できなかったコンテンツを本書関連サイトで解説してくれています。非常に丁寧に作り込まれているという印象の本です。これは話題になること間違いないです。

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