あなたはWACCを本当に理解しているか?

今回は、あなたがWACC(ワック)を本当に理解しているか確認するための質問を用意しました。まずは復習です。「企業価値は誰にとっての価値か」です。ファイナンスにおける企業価値とは、「債権者にとっての価値」と「株主にとっての価値」でした(下図右側)。そして株主にとっての価値に対して、市場が付けているのは株式時価総額という価格です。株価は短期的には気まぐれです。企業とは直接関係のないような出来事で上下します。一方、株価は長期的には、その企業の本源的な価値に収れんすることは、さまざまな実証データから証明されています。


出所:「実況!ビジネス力養成講義 ファイナンス(石野雄一著)」(以下同様)

次に「企業価値は何でできてるのか?」という視点にうつりたいと思います。上図でいえば、左側の部分になります。企業価値は、「事業価値」と「非事業資産価値(非事業価値ともいいます)」に分かれます。「事業価値」はまさに企業が行っている事業の価値です。これはその企業が将来生み出すフリーキャッシュフローを現在価値に割り引くことで求めることができます(下図)。そのときの割引率はWACC(ワック)です。では、なぜWACCで割り引くのでしょうか。WACCは債権者と株主の要求収益率です。WACCで割り引くのは、経営者に対して、「少なくともWACC以上の収益率で運用してほしい」という債権者と株主の願いが込められているともいえます。



では、ここで質問です。「あなたの会社がX社の買収を検討しています。X社の企業価値評価に適用するWACC(ワック)はあなたの会社のWACCでしょうか。それともX社のWACCでしょうか」根拠を含めてご自身で考えてみてください。

 

 

 

 

 

(ここは考える時間です)

 

 

 

 

 

 

 

(解答)企業価値評価に適用するWACCはX社のWACCです。例えば、東京電力がバイオベンチャーの買収を検討しているとしましょう。電力事業をメインとする東京電力のWACCを割引率に使うのは違和感があるはずです。バイオベンチャーのフリーキャッシュフローを東京電力のWACCで割り引けば、本来の価値よりも相当に高い評価になってしまうでしょう。なぜなら、東京電力の事業リスクはバイオベンチャーの事業リスクよりも低く、おそらく東京電力のWACCはバイオベンチャーのWACCよりも低いからです。事業リスクに応じた割引率を適用すべきという大原則を覚えておいてください。

動画配信開始