ソニーグループの復活

ソニーは2021年4月、「ソニーグループ」として歩き出しました。これは63年ぶりの社名変更です。足元の業績はまさに絶好調です。コロナ禍の影響など、どこ吹く風です。2021年3月期の売上高は8兆9994億円(前期比9%増加)、営業利益は9719億円(同15%増加)と、ともに過去最高を更新しました。

当期純利益は株式の評価益などの影響もあり、前期比2倍の1兆1718億円となり、初めて1兆円の大台を突破しました。日本の製造業に限れば、2021年3月期決算の当期純利益で1兆円を超えたのはトヨタ自動車とソニーだけで、過去にさかのぼってもトヨタと2018年3月期のホンダだけですから、すごいことです。

好業績の要因は祖業のエレクトロニクス事業ではなく、ゲームや映画、音楽などのエンタメ部門にあります。セグメント別の2021年3月期のゲームと音楽、映画などエンタメ部門の売上高は単純合算で4兆3550億円、営業利益も6108億円に達しています。


出所:ソニーグループ決算説明会資料、オントラック作成

ソニーのエンタメ部門はソニー全体の売上高の約半分、営業利益の6割を占めるまでに成長してきているのです。6事業の中で唯一、営業利益が減少しているのが、半導体関連のイメージング&センシング・ソリューション(I&SS)事業です。画像センサーで世界シェアの半分を握り、稼ぎ頭となってきたものの、市況に左右されがちで2021年3月期は主要取引先であったファーウェイのスマホ向けの画像センサーの落ち込みが影響したようです。

それでは、EVA(経済的付加価値)の観点から、ソニーの企業価値創造がどうなっているか見てみましょう。EVA(経済的付加価値、Economic Value Added)はスターン・スチュワート社の登録商標で、企業が一定期間にどれだけの価値を創造したかをみる指標です。言い換えれば、資本コスト以上の税引後営業利益を生み出しているかをみる指標とも言えます。ここでは、ざっくりEVAを計算してみましょう。ソニーのWACCは、3.53%と推定できます(下図ご参照)。

出所:オントラック分析

これに対して、ROIC(資産ベース)を計算すると2021年3月期は4.56%です。あくまでもざっくり計算ではありますが、EVAスプレッド(ROICとWACCの差)は1.1%です。これに投下資本を掛けたEVAは2078億円であることがわかります。これは、1年間で資本コストを賄うだけの営業利益を稼ぐことが出来てたことを意味します。言い換えれば、2078億円企業価値を創造したと言えます。

出所:オントラック分析

弊社の分析によれば、ソニーは長らくEVAがマイナスでした。EVAがプラスに転じた今、ついにソニーは復活したと言えるでしょう。ソニーグループの吉田憲一郎社長は5月26日、オンラインで開催した経営方針説明会でこう宣言しました。「現在、ソニーは世界で1億6000万人とエンターテインメントで直接つながっている。これを10億人に広げたい」新生ソニーグループが更なる成長に向けてスタートしたと言えます。

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