ソフトバンクG、潮目はどう変わったのか

先月12日に行われたソフトバンクグループ(以下SBG)の第3四半期(3Q)決算説明会で、孫正義社長はこう語り始めました。

「今回の決算を一言でいうならば、潮目が変わった決算といえるでしょう」

潮目が変わった理由を孫社長は三つあげています。
・スプリントとT-mobile の合併差止訴訟に勝訴したことによって合併の最終段階に入ることが出来たこと
・ビジョンファンド事業(SVF事業)の3Qの営業利益が▲2,251億円と2Qの営業利益▲9,703億円から大きく反転したこと
・SBGの3Qの連結営業利益が26億円と黒字化したこと

ただ、3Qの連結営業利益が黒字化したものの、以下の図の通り、これまでの連結営業利益累計では▲130億円と前期の同期間の1兆8,590億円と比較すれば、いまだ予断を許さない状況であることがわかります。

この連結営業利益▲130億円の要因は、SVF事業の営業利益▲7,978億円にあります。昨年の営業利益8,088億円にほぼ匹敵する金額のマイナスを計上しているのです。

孫社長は、下のスライドを映し出し、こう話始めます。
「この1枚の絵をみていただきたい。みなさんには何に見えるでしょうか。左からみれば、アヒルに見える。右から見るとウサギに見える。同じ生き物でも違って見えます。」

そして、次にこのスライドです。「左から見ると営業利益、右から見ると株主価値です。一つの会社の成績を表すのに左からみるべきか、右からみるべきか。SBGの業績をみるのは右の株主価値でみるべきだと思います。」

今回も孫社長のメッセージは「会計上の営業利益よりも、株主価値の方が重要である」です。実際のところ、営業利益は▲130億円の赤字でも、ソフトバンクGの株主価値は2019年9月から5兆円増えているのです。確かに理にかなっています。

この株主価値増加の要因は、主にアリババの時価総額が3.9兆円増加し、保有株式価値が5兆円増加したことにあります。

「潮目が変わった」と語った孫社長です。その決算説明会から1ヵ月がたち、事態は刻刻と変化しています。SBGは、UberやWeWorkなど自動車やオフィスを共有するシェアリングエコノミーをリードする新興企業に投資してきました。しかし、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大が人の交流を妨げ、そのSBGのビジネスモデル自体の将来性が危ぶまれています。

ブルームバーグによれば、ニューヨークでは感染症拡大の防止策として住民の外出禁止や在宅勤務が徹底され、WeWorkのシェアオフィスは閑古鳥が鳴いているといいます。また、Uberのダラ・コスロシャヒCEOは、「自分の子どもらをUberには乗せない」と語ったといいます。

そして、3月23日にSBGは、ついに「自己株式取得と負債削減のために最大4.5兆円の当社保有資産の売却または資金化」を決定しました。これにより、最大2兆円の自己株式取得にくわえ、残額を負債の償還、社債の買入れ、現預金残高に充当するとしています。

孫社長は次のように述べています。

「このプログラムは当社史上最大の自己株式取得であり、さらに過去最大の現預金等の増加につながるもので、当社の事業に対する揺るぎない自信に基づくものです。くわえて、このプログラムによって当社は、負債の削減を通じてバランスシートを強化します。なお、今回の資金化の対象となる資産は、当社の保有資産価値の20%に満たないものです。」

今まで孫社長の壮大なビジョンに世界中からマネーが集まってきました。そのマネーを新興企業に投資し、バランスシートを拡大してきたSBGです。この発表は大きな方針転換だと言えるでしょう。”Shrink to grow” という言葉があります。将来の成長のためにスリム化を図り筋肉質になると言った意味合いでしょう。今こそ、SBGにとって「潮目」が大きく変わったと言えます。

※すべての図の出典は2020年3月期第3四半期ソフトバンクグループ決算説明会資料

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