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ビックマックと為替レートの不思議な関係

最近のドル円の為替レートは1ドルが130円台です。為替レートはどのように決まるのでしょうか。購買力平価という考え方があります。これは、通貨間の購買力を一定に保つように為替レートが決定されるという考え方です。購買力平価には、絶対的購買力平価と相対的購買力平価の二つがあります。

今回は、絶対的購買力平価についてお話しましょう。絶対的購買力平価の考え方の根底にあるのは、経済学でいう「1物1価の原則」です。これは、同じ物であれば、どの通貨で売られている物であっても、物の価格は同じはずだということです。

たとえば、東京で私の大好きなビール350ml缶が240円で売られているとします。為替レートが1ドル120円であれば、ニューヨークで、同じビールが2ドルで売られているはずだということです。反対に2ドルで売られていれば、為替レートは、1ドル=120円になります。

ところが、この絶対的購買力平価の考え方が成り立つには、ビールの輸送や保管などの取引コストがゼロであるなどの前提が必要です。実は、現実の世界では、この絶対的購買力平価に反する事例に事欠きません。一番有名な例はエコノミスト社が開発したThe Big Mac Indexです。あなたも一度は目にしたことがあるはずです。

これをみると、およそ世界のビッグマックが同じ価格で売られているとは言えないことがわかります。例えば、2022年1月時点で、日本のビックマックは390円です。これに対して、米国では5.81ドルで売られています。ここから計算される為替レートは、1ドル約67円です。

なぜ、1物多価の状態のままになっているのでしょうか。これは、ビッグマックが輸送できず、裁定取引(この場合は日本で買って米国で売る)ができないこと、また、ビッグマックなどのファーストフードに対する各国の人たちの嗜好の違いがあるためなど様々なことが考えられます。

簡単に輸送できるなど取引コストが低い商品や国によって嗜好の違いがそれほどないモノについてはどうでしょうか。たとえば、東京市場とニューヨーク市場の2つの市場に上場している企業の株価は、おそらく絶対的購買力平価の考え方が成立すると考えられます。

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