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企業価値算定に使う割引率

「買収を検討している企業の価値算定をざっくり自分でやる必要があります。その時の割引率は自分の会社の資本コストなのか、それとも買収対象企業の資本コストなのか。どちらがいいんでしょうか?」

最近、M&A担当になったという方からの質問です。

意外とファイナンスがわかっていても、即答できる人は少ないかも知れません。まずはご自身でよく考えてからこのあとをお読みください。

たとえば、家電メーカーがEV(Electric Vehicle)事業への進出を検討しているとしましょう。投資をするのは家電メーカーです。なので、家電メーカーの資本コストを使うべきと考える人がいるかも知れません。家電メーカーの資本コストは、それこそ投資家(債権者+株主)が要求する収益率だからです。ところが、これは間違いです。

EV事業のリスク特性(リスクの高低)は、家電メーカーとはたいぶ違うでしょう。このような場合、家電メーカーの資本コストではなく、投資先のEV事業のリスク特性を反映した資本コストを使う必要があるのです。考えてみれば、資本コストとは、投資家(債権者+株主)の機会費用です。その機会費用は、リスク特性によって変化するのは当然と言えるでしょう。

もし、買収対象企業のリスクが高い場合、自社の低い資本コストを割引率に使えば、企業価値は本来のものよりも高く算定されることになります。また、一方で、買収対象企業のリスクが低い場合、自社の高い資本コストに割引率に使えば、せっかくの投資機会をみすみす逃してしまうかも知れません。

このようなことを避けるためにも、買収対象企業の属する業界の類似企業を選び、財務データや株価データなどから買収対象企業の資本コストを推定する必要があります。そして、その資本コストを割引率に適用し買収対象企業の価値を算定すべきなのです。

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