凸版印刷はお買い得!?

2019年7月17日付日経新聞によると4期連続の最高益を狙うリクルートホールディングス(以下リクルート)ですが、今後の株価の上値を抑える事態が発生しそうです。2014年度の上場から早くも5年。いまでは時価総額が6兆円近くになっています。それに伴い、取引先などがもつリクルート株の価値も高まっています。上場企業の持ち合い株式の解消への圧力が強まる中、含み益が大きくなったリクルート株は格好の売却対象銘柄になるだろうというのがその記事の骨子です。

下図が2019年3月期末時点での同社株を保有する主な企業リストです。私が注目したのはリクルート株の各社の時価総額に占める割合です。なんと図書印刷は時価総額の82%をリクルート株が占めます。桁違いにリクルート株を保有する凸版印刷は、2019年3月期に1,050万株売却したものの、依然として10,260万株を保有しています。リクルート株の凸版印刷の時価総額に占める割合は64%であることがわかります。

(出所:保有株式数については日経新聞、各社の時価総額に占めるリクルート株の割合はオントラック分析 時価総額算定の時点は2019年7月19日)

ところが凸版印刷の場合は、リクルート株で話は終わりません。凸版印刷の2019年3月期における現金・預金残高は2,573億円です。これに加えて、有価証券699億円、投資有価証券6,390億円(内572億円が関連会社株)を保有しています。つまり、現預金と有価証券で合計9,090億円(除く関連会社株)持っていることになります。これらの中には当然ながら、リクルート株も入っています(2019年3月期時点では3,243億円)。

信じられないのは、この凸版印刷の時価総額(市場がつけている価格)が約5,400億円だということです。たとえば、あなたが5,400億円を借り入れし、うまく凸版印刷を買収出来たとしましょう。9,000億円ちかくの現預金+有価証券があなたのものになりますから、それで5,400億円の借金を返済してもおつりがくるのです。さらに凸版印刷のビジネスそのものが手に入るのです。

凸版印刷の2019年3月期の売上高は1兆4647億円と前期比ほぼ横ばいながら、営業利益率は前期比0.5%減の3.1%となっています。日本の上場会社(除く日本郵政グループ、金融機関)の平均の営業利益率が6%ですから、凸版印刷の収益性は決して高いとは言えない状況ではあります。ただ、赤字というわけではないのです。

(出所:オントラック分析)

ところがこのビジネスそのものの価値はないどころかマイナスだと市場はとらえているということになります。9,000億円ちかくの現預金+有価証券を持っている凸版印刷に5,400億円の値札がついている今の状況は異常です。この状況を凸版印刷の経営者はどのように考えているのでしょうか。

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