企業分析をする際にバランスシートが大切であることは確かです。
ただ、忘れてはいけないことがあります。それは、次の2点です。
- バランスシートの純資産は、資産合計から負債合計を差し引いた「差額」にすぎないこと
- バランスシートの資産サイドは、その金額で現金化できるとは限らないこと
純資産が資産と負債の「差額」であるという点を認識することはとても大切です。ましてや、今後はますます重要になってくるでしょう。
なぜなら、IFRS(国際財務報告基準)の基本的な考え方は、資産と負債の時価(将来に生み出すキャッシュフローの現在価値の合計)の差額として、企業の価値をとらえるということだからです。
IFRSでは、資産と負債の「時価」ベースの差額としていることに注意してください。ここで、もう一度、2つ目のポイントを読んでみてください。すべての資産がその金額で現金化できるとは限らない、つまり時価ではないということです。
たとえば、図の左側のようなバランスシートの会社があるとします。
資産合計は、3,050、負債合計は、2,400.純資産はその差額の650です。
それでは、資産サイドの項目を実態に即した形で時価ベースに修正してみましょう。現金・預金、有価証券はそのままの金額が現金化できるとします。
一方で、受取手形、売掛金の一部は実際は回収不能だと仮定し、減額します。棚卸資産(在庫)は500と計上されていますが、半分が不良在庫だと判明したとします。同じように固定資産も時価ベースで評価してみると、資産合計は3,050から1,700に減少しています。
これに対して、負債サイドは原則としてその金額を将来支払わなければなりませんから、変わりません。
純資産は、時価ベースの資産1,700と負債2,400の差額として計算できますから、▲700の債務超過(負債が資産を上回っている状態)であることがわかるのです。この会社は実質債務超過だということがわかります。
このように、現状の決算書は、全ての資産が時価評価されているわけではありません。したがって、バランスシートの数値をそのまま使って分析しても、あまり意味はないのです。この点は強調しすぎてもしすぎることはないと思います。