大谷翔平選手が、10年間で総額7億ドルの契約をロサンゼルス・ドジャースと結んだことは、世界の注目を集めました。この契約の中で、年俸7000万ドルの大部分が後払いとされており、大谷選手が今後10年間で直接受け取られる年俸は200万ドルに限られています。残りの金額は、2034年から2043年にかけて、毎年6800万ドルずつ支払われる予定です。このように約97%の金額が後払いという条件は、これまでに例を見ないもので、大変驚きをもって受け止められています。
実は、イチロー選手も後払いを行っています。2007年にシアトル・マリナーズと再契約しました。この際、契約総額9000万ドルのうち、2500万ドルが後払いとされました。イチロー選手は、その金額をチームの補強資金に充てるよう要望されたと伝えられています。この後払い金には年利5.5%が適用され、イチロー選手が引退された後、早くても2032年まで、毎年、分割して支払われることになっています。
このように後払いは、大谷選手が初めてというわけではありません。異例なのは、大谷選手の後払い契約は無利息だということです。先述したようにイチロー選手の場合、年利5.5%の利息がついています。これは、イチロー選手の機会コスト、つまり、後払いしなかったら、得られたであろうリターン分を補填する意味もあります。
大谷選手の年棒(約3億円)から換算した時給は2,000万円以上という意味があるとは言えない報道がされています。私たちは、「お金の時間価値」を考慮して、今回の大谷選手の契約を考えてみましょう。「お金の時間価値」を考慮すると、お金の価値は、そのお金を受け取るタイミングで変わることになります。下図は、1ドル=150円で換算した大谷選手が今後受け取るキャッシュフローです。単純に合計すると1,050億円になっています。
割引率は米国債の10年物利回りを参考にして、便宜的に4%と置きましょう。ロサンジェルス・ドジャースの信用リスクを考慮すれば、リスクフリーとは言えません。債務不履行となる可能性がありますが、ここでは、議論を簡単にするために、リスクフリーとします。契約時に1,050億円を一括でもらえるわけではありませんから、通常ケースでも現在価値は、851.6億円になります。後払いのケースでは、なんと583.2億円になってしまうのです。この差額である268.4億円は、まさにドジャースにとっては、大谷選手からの贈り物なのです。さらに後払いによって、ドジャースは多額の節税ができると言われています。
大谷選手にとっても後払いによって節税ができるのではという話がありましたが、共同通信の報道によると、節税はほぼできず、50%超の最高税率が適用されるようです。むろん、大谷選手にとっては、そのようなことは二の次でしょう。さまざまな面で私たちを驚かせてくれる大谷選手、今後の活躍が本当に楽しみです。
「毎週、ブログをお届けします!無料のメールマガジンに登録するには、下のフォームにメールアドレスを入力して登録ボタンをクリックしてください。」