国際会計基準(IFRS)と日本基準との差異を小さくする「共通化」の作業が進んでいます。
主な会計基準の変更項目のひとつに「年金資産の割引率の基準」があります。
企業は、将来の退職金や年金の支払いに必要な金額を年金債務(退職給付引当金)としてバランスシートの負債サイドに計上しています。
この年金債務の算定方法は、将来の退職金、年金などのキャッシュ(アウト)フローを現在価値に割り引くわけです。
従来はこの割引率を過去5年の長期債の平均利回りを参考に決定することが認められていました。これが10年3月期から期末の利回りを基準としなくなったのです。3月末に長期金利が急低下した場合、企業は割引率の引き下げを求められます。
割引率が下がると将来のキャッシュフローの現在価値は増加します。つまり、年金債務が増加するわけです。その結果、現在用意している年金資産額に対して足りない分(年金の積立不足)を費用に計上する必要があります。
実際には、キャッシュアウトはないものの、PL上、利益の減少要因にはなるわけです。
こうした動きをみると、従来の日本の会計基準の特徴であった取得原価重視から、より実態に近いバランスシートを重視する(公正価値重視)というIFRSの特徴が出てきています。