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株価急落を冷静に乗り越えるためのファイナンスの原則

本日、2024年8月5日の東京株式市場で日経平均株価が急落しました。前週末比で4,451円(12%)安の31,458円となり、日経新聞によれば、この下落幅は1987年10月20日のブラックマンデー翌日の3,836円安を超え、過去最大の下落幅となりました。こんな時こそ、さまざまな情報から距離を置き、冷静に原理原則に立ち返ることが重要だと自分に言い聞かせています。

株価急落の原因についてはさまざまなメディアで報道されていますが、本当のところ、真の原因を知ることは難しいものです。本日、皆さんにご紹介したいのは、「道具としてのファイナンス」のネタ本『Principles of Finance with Excel』のはしがきにある、著者Simon Benninga教授の”Eight Principles of Finance(ファイナンスの8つの原理)”です。この本が出版される前に、原稿が教授のサイトから無料でダウンロードできました。私はその原稿を夢中で読み、ファイナンスを学ぶには最高のコンテンツだと確信しました。

教授自身もはしがきの最後にこう述べています。

“Combining finance concepts with Excel is a ‘killer app!’ Principles of Finance with Excel is the only finance principles book on the market offering this combination. Enjoy!”

(ファイナンスの概念とエクセルの組み合わせは「キラーアプリ」です。『Principles of Finance with Excel』は、この組み合わせを提供する唯一のファイナンスの原則の本です。お楽しみください!)

私がファイナンスとエクセル(財務モデリング)を皆さんにお伝えできるのも、このコンテンツに出会い、エクセルと組み合わせたファイナンス本「道具としてのファイナンス」を出版できたおかげなのです。

Eight Principles of Finance(ファイナンスの8つの原理)

原理 1: Buy Assets That Add Value; Avoid Buying Assets That Don’t (価値を生む資産を購入し、価値を生まない資産を避ける)

お金を賢く使うには、価値を生むものを買い、価値を生まないものは避けることが大切です。たとえば、古くて動きが悪いコピー機を使い続けるか、それとも、動作が速くて故障が少なく、インクやエネルギーの使用量が少ない新しいコピー機を買うかを考えます。重要なのは、古いコピー機を使い続けるのと新しいコピー機を買うのとで、どちらがビジネスにとってより大きな価値をもたらすかです。株式、債券、機械、企業など、異なる資産の価値を判断するには、同じ条件で比較することが必要です。この原則は簡単そうに見えますが、実行するのは意外と難しいです。

原理 2: Cash Is King (キャッシュが王である)

資産の価値は、その資産がどれだけの現金(キャッシュフロー)を生み出すかで決まります。キャッシュフローとは、資産が特定の時点で生み出す税引き後の現金のことです。たとえば、ピザ屋が火曜日に500ドルのピザを売り、同じ日に300ドル分の材料を買ったとします。帳簿には200ドルの利益が出ているように見えても、実際には300ドルの現金が手元にあります。これは、売上の400ドルをすぐに受け取って、材料費の100ドルを前払いし、200ドルは後払いにしたためです。ファイナンスでは、帳簿上の利益よりも、実際のキャッシュフローが最も重要です。

原理 3: The Time Dimension of Financial Decisions Is Important (財務上の意思決定の時間的側面は重要である)

多くの財務上の意思決定には、異なる時間におけるキャッシュフローを比較することが含まれます。たとえば、今日新しいコピー機を購入すると、すぐにお金が出ていきますが、将来的には修理代やインク代の節約ができます。このように、時間によるキャッシュフローの違いを正確に考えることが必要です。

原理 4: Know How to Compute the Cost of Financial Alternatives (財務上の代替案のコストを計算する方法を知る)

財務上の選択肢には、異なる方法のコストを計算することが求められます。たとえば、コピー機を買うのとリースするのとではどちらが得か、クレジットカードの「日割り利息」は銀行ローンの「月割り利息」よりも高いのかを判断するために、正確なコストを計算する能力が必要です。

原理 5: Minimize the Cost of Financing (資金調達コストを最小限に抑える)

多くの財務上の決定には、適切な資金調達方法を選択することも含まれます。コピー機を購入する際に、販売店のローンで購入すべきか、銀行ローンを利用すべきかを考えることです。適切な資金調達方法を選ぶことは、投資の決定とは別の重要なステップです。

原理 6: Take Risk into Account (リスクを考慮に入れる)

財務上の選択肢は、しばしばリスクを考慮する必要があります。たとえば、株式市場に投資するか、それとも銀行にお金を預けておくかの選択です。株式市場への投資は一般的に高いリターンをもたらしますが、銀行預金よりもリスクが高くなります。本書では、リスクを定量化し、財務上の選択肢を比較する方法を学びます。

原理 7: Markets Are Efficient and Deal Well with Information (市場は効率的で情報をうまく扱う)

金融市場には多くの情報が流れていますが、そのすべてを活用することは難しいです。市場は、情報を使って多くの人が売買を行うため、その情報によって価格が適正に決まることが多いです。このため、すべての情報を知る必要はなく、市場は効率的に機能しています。

原理 8: Diversification Is Important (分散投資は重要である)

「すべての卵を一つのカゴに盛るな」ということわざがありますが、ファイナンスでも同じです。少数の株式や債券に投資するのではなく、ポートフォリオに分散して投資することで、リスクを減らすことができます。

原理7についてですが、今回の急激な株価下落を考えると、市場は、常に効率的であるとは限らないことがわかります。市場は時として、人間の感情によって大きく動くことがあります。ウォーレン・バフェットは、株価下落を「バーゲンセール」と呼んでいます。バフェットは、株価よりも企業の本質的価値に注目します。彼の考えでは、株価が下落しても企業の本質的価値が変わらない場合、その株は割安になっていると判断するのです。

また、バフェットは「他人が貪欲になっているときには恐れ、他人が恐れているときには貪欲になれ」と述べています。株価が下落すると、多くの投資家は不安になり、売りに出ることが多いのです。このときこそ、冷静に判断し、価値があると信じる企業の株を安く買うことができれば、長期的に利益を得られる可能性が高まるのです。

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