昨日(2010年11月4日)の日経新聞に「上場企業 自社株買い 増加基調」という記事がありました。キャノンが10月までに約500億円分の自社株を買い入れたほか、KDDIや富士フィルムホールディングスなど新たに取得枠を設ける動きが目立つとあります。
自社株買いは、自社の株式が過小評価されているときに行えば、株主価値を増加させます。つまり、買った株の価値が市場価格よりも高いことから、株主にとっての正味価値が増加するのです。
ちなみに過小評価されているということは、市場がつける価格(=株式時価総額)よりも、DCF法などで算定した株主価値の方が高い状態のことです。
また、自社株買いは、投資家からすれば、「経営者が自社の株を割安だと考えている」というメッセージにもなります。この「株式が割安である」というシグナルによって、需給関係でいえば、需要が増え、その意味でも株価は一時的に上がりやすくなるのです。
それでは、ここで質問です。自社株買いといいますが、誰が株を買うことになるのでしょうか。
「企業が買う」「経営者が買う」と答えたアナタは以前の私と同じで自社株買いの本質をわかっていません。
実は、自社株買いとは、自社株買いに応じて、株を売った既存株主の株主価値を株を売らなかった株主が時価で買いとるということなのです。
自社株を購入するためには、当然企業の手元の現金は減ります。したがって、株主価値と市場価格が同じであれば、自社株買いそのものは、株主価値に影響を与えません。
しかし、株主価値が市場価格よりも高い状況であれば、その差額分、自社株を売らなかった株主の1人当たりの富が増加することになるのです。その分、株を売った株主は損をしていることになります。
実は、私がこの自社株買いの本質を教わったのが板倉雄一郎氏からなんです。
自社株に関する板倉さんのエッセイは以下のサイトをご覧下さい。
その板倉さんが超ロングセラー「社長失格」の電子書籍を出版しました。私はこの本に相当影響を受けました。読んでいない方は一読をお薦めします。
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