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航空券予約を例にリアルオプションを理解する

意思決定とは、選ぶこと。
不確実性とは、わからないこと。
オプションとは、選べる権利のこと。
オプションを現実の(リアルな)意思決定に用いるとき、「リアルオプション」という。

これは、リアルオプションに関する名著「人生のリアルオプション」の帯に記されている言葉です。
リアルオプションの考えは、不確実な状況であればあるほど、価値を持ちます。

例えば、飛行機のチケットを予約するのも、チケットを購入する権利(オプション)を購入したといえます。ただ、このとき、チケットにキャンセルできる柔軟性があることが大切です。
今回は、航空券の予約にまつわるオプションの価値をどのように算定すればいいのか、具体的に考えてみます。簡略化のため、お金の時間価値は考慮しません。

事例:
あなたは1か月後にビジネス出張があるかもしれないため、ニューヨーク行きの航空券を予約することを考えています。しかし、出張が確定していないため、キャンセル可能な航空券を購入するか、キャンセル不可の安価な航空券を購入するかで迷っています。
キャンセル可能な航空券: 250,000円(払い戻し手数料: 25,000円)
キャンセル不可の航空券: 200,000円
出張の確率: 60%(つまり、出張しない確率は40%)
キャンセルした場合の損失: 航空券の全額(キャンセル不可の場合)

【リアルオプションの価値算定方法】

・期待コストを計算する:
キャンセル可能な航空券の期待コスト:
出張がある場合のコスト: 250,000円
出張がない場合のコスト: 払い戻し手数料の25,000円
期待コスト = (出張の確率 × 出張がある場合のコスト) + (出張がない確率 × 払い戻し手数料)
期待コスト = (60%× 250,000円) + (40% × 25,000円) =160,000円

キャンセル不可の航空券の期待コスト:
出張がある場合のコスト: 200,000円
出張がない場合のコスト: 200,000円(全額損失)
期待コスト = (出張の確率 × 出張がある場合のコスト) + (出張がない確率 × 出張がない場合のコスト)
期待コスト = (60% × 200,000円) + (40% × 200,000円) =200,000円

・オプション価値を計算する:
キャンセル可能な航空券を選ぶことで、期待コストが160,000円となり、キャンセル不可の航空券を選ぶよりもコストを軽減できます。コスト削減分がオプション価値になります。

オプション価値 = キャンセル不可の航空券の期待コスト – キャンセル可能な航空券の期待コスト=200,000円 – 160,000円=40,000円

このオプションを入手するための追加費用がオプション料です。この場合、キャンセル可能な航空券入手の追加費用50,000円(250,000円 -200,000円)が不確実性への保険としてリアルオプションを入手するためのオプション料です。

・NPV(正味現在価値)を計算する:
NPV=オプション価値-オプション料=40,000円-50,000円=△10,000円

NPVはマイナスですから、キャンセル可能な航空券を買う必要はないことになります。それでは、出張の確率60%はどのように予想すべきでしょうか?これも正直なところ、わかりません。このような場合には、感度分析を用いることで、出張確率が変化した際にNPVがどのように変わるかを見てみましょう。

分析結果として、出張確率が約55.6%以下であれば、NPVがプラスなることがわかります。もし、出張に行く確率が半分半分の場合は、NPVはプラスになりますから、キャンセル可能な航空券を購入した方がいいでしょう。

もちろん、最終的な意思決定は、今までみてきたNPV分析に加えて、定性的な要因も考慮することが大切です。リスク回避が重要な状況であれば、追加のコストを支払ってでも柔軟性を確保する選択も考慮されるべきだと思います。

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